脚本:南谷ヒロミ 監督:井上梅次 ゲスト:佐山俊二
身寄りの無い老人や子供を預かり面倒を見る「浄雲寺」を管轄する寺社方侍・田村重蔵(剣持伴紀)から加代(鮎川いずみ)の元に表の仕事が入る。浄雲寺に偉い尼僧が来たことにして、みんなを慰めてやって欲しい、とのこと。人の役に立ち依頼料も弾むとのことで、加代は二つ返事で引き受ける。
この浄雲寺、一般人からの寄進(寄付金)と寺社奉行所からの補助金で運営される公共老人ホームで、江戸での評判はすこぶる良い。田村は寺社奉行所から出向し浄雲寺内の施設管理及び運営責任を行い、寺社奉行所内では浄雲寺担当職員として老人たちの名簿・入居者数を管理及び報告する筧善之助(吉田豊明)がいるのだが、この二人、実は浄雲寺の尼僧である覚妙尼(水原麻記)とならず者・伴次(出水憲司)と結託しており、施設内の老人の数を合わせるため、既に入所している体の弱った老人たちを容赦なく殺し、寄付金と補助金をピンハネしている残忍な連中だった。
そんなことも知らずに多平(佐山俊二)という老人が浄雲寺に雇用される。多平は大店の大番頭を定年まで勤め上げ、老後は人の役に立ちたいとの一心で、浄雲寺に再就職するのだが、実はこの世の地獄であることを多平は知らない。多平と関わりを持つ主水(藤田まこと)も「どこで聞いても(浄雲寺の)評判が良いって言うのは、何か裏があるな」と浄雲寺に疑いの眼差しを向け始めた。一方、良いことをしてお金をたんまりいただいた加代は、調子に乗って金使いが荒くなる。その様子を不審に思った秀(三田村邦彦)は主水に相談。主水は加代を殴り飛ばし真相を聞きだそうとするも、田村から固く口止めをされているため口を割ろうとしない。しかし、加代も自分のやっていることが本当に正しいことなのか、もう一度確かめるために浄雲寺へ行く。浄雲寺では既に2人の老婆が殺害されており、更に帰り道では多平の前任者であった人物の妻が、夫が浄雲寺の真相を知って殺されたことを尼僧姿の加代に訴えるのだった。主水も多平から相談を持ちかけられ、「今まで色んな悪を見てきたが、こんな悪い連中は生まれて初めて見たぜ」と憤りを隠せない。秀も話を聞いて怒りをあらわにする。加代は主水の表の仕事で捕まえてくれとお願いするが、縦割りの役所では、町奉行所同心が寺社奉行所の悪事を調べることが出来ない。寺社奉行所の調書を見せてもらっただけでも、寺社奉行から南町奉行に厳しい突き上げがあるくらいなのだから。
真相を知ってしまった加代と多平。まず多平が妻共々殺された。あまりの非道ぶりに、主水も思わず「酷ぇことしやがる」と呟く。加代としても、今回の事件の片棒を担いだ以上やりきれない部分もあり、ぜひ裏の仕事で供養してやって欲しいと懇願。勇次(中条きよし)が多平に端唄を教えていたことを知っている主水は、勇次を仕事に参加させることを加代に指示。浄雲寺へ乗り込むのだった。
新仕事人のエピソードの中では評判の高い作品。純粋無垢な多平他老人たちが悪人たちの刃に掛かって殺されていくのは、見ていて心苦しいものがあります。その分、視聴者たちの悪人たちへの怒りが増幅され、主水たちの仕事が終わるとすっとする面もあるわけですが。
加代がトラブルメーカーとなる話なので加代を中心に物語が描かれますが、彼女の魅力が出ていて良いと思います。勇次に迫ってみたりするのも色気があって良いですね。
ところどころに挿入されるコメディパートが良い息抜きになっており、全体として上手くまとまっているのではないでしょうか。多平が殺され止めを刺されるシーンとか、筧が雨宿りをして手拭で顔を拭くシーン、最後中村家のせんりつの喧嘩などカメラアングルにも拘っていますね……と思ったら井上梅次か。丁寧に作られています。
本ページの情報は2020年2月時点のものです。
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