何か無理やり続編を作りだした感もあるこの作品。最終回まで見るとますます「?」な気持ちになる不思議な作品です。
話的にも、1話である「江戸日本橋」から唐十郎の過去を描く「神奈川沖浪裏」まではともかく、その後がどうもパワーダウンしていてテンションが上がらない。お艶の”殺してやる……”が印象深い「甲州三坂の水面」あたりは少し盛り返したような気もするけれど、それでも最終回に向けてのインパクトは弱いと思います。1話ごとの出来は、良くも悪くも安定路線が続くと言うか。吉田剛必殺デビュー作の「本所立川」もどうもね……。
最終回の「凱風快晴」については、一貫して北斎の動向を中心に捉えていて、北斎が「自分殺し」をお艶に依頼し、写楽の名前で人物画が出回り始めたことが引き金となって殺されてしまい、その仇を討った後結局お艶はどこかへ旅立ってしまう。この点については、『東海道五十三次殺し旅』の最終回で安藤広重が出てきて一応の結末を迎えただけに、永寿堂与八の本当の意図が分からない分比較すると少々消化不良の感を否めません。しかしながら、脚本を担当した大御所・安倍徹郎にとっては、この作品は自己ベストとのこと。安倍徹郎の意図した部分を汲み取れない私がいけないのか……このあたりは各人の感性にお任せするしかないのだけれど。
殺しのシーンは、お艶の分解三味線は『必殺仕事人』のおとわさんも使っているので省きますが、唐十郎の釣竿は大人数でも音無き暗殺でも両方イケるので、殺陣としての魅力はありました。「駿州片倉茶園ノ不二」「駿州江尻」での殺陣は特に最高でしたね。一方で、宇蔵の殺しである魚篭による頭蓋骨砕きについては、アニメーションを挿入しているにも関わらず、インパクトが弱く感じました。途中からアニメーションもカットされましたし。魚篭を外したときに、俳優さんが面白い表情をしていると良かったんですけどね。それでも、『東海道五十三次殺し旅』よりはかなりスピーディになっていると思います。
結局、このテンションの低さは『翔べ!必殺うらごろし』に悪い意味で引き継がれてしまうわけで、やっぱりこの時期は必殺にとって低迷期だったのかな、と思います。
umikaze的に好きな回
- 江戸日本橋
- 駿州片倉茶園ノ不二
- 甲州三坂の水面
- 姥捨ての因習と、それに乗じて暴利を貪る悪人たちにお艶の怒りが爆発する。”殺してやる””富士に登ってもらいますよ”など名セリフも盛りだくさん。「目には目を」で悪人を始末し、その様子を一部始終見届けたお艶が目を伏せてそのままエンディングに流れ込む演出は、視聴者の心境と作中のお艶の心境をシンクロさせるのではないだろうか。
とりあえずこんなところ。本当は「神奈川沖浪裏」とか「駿州江尻」とかも語りたいんだけどね……。いまいちそこまで踏み込めないというか、自分の中で語るほどテンションが上がってこないのが事実。それが(私にとって)この作品の弱いところではないかと。