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日本の片隅でひっそりと暮らすおじさんが書くブログ

特捜最前線 第234話「リンチ経営塾・消えた父親たち!」

脚本:長坂秀佳 監督:辻理 ゲスト:戸浦六宏 森山周一郎 石山律雄

中小企業経営者・野本が顔を潰されリンチにあって殺された。野本が経営塾「三望会」の会員であったことから、橘(本郷功次郎)は冴えない中小企業経営者に扮して潜入捜査を行うことに。三望会事務局を訪れると、事務局長(森山周一郎)が早速研修所へ向かうことを勧める。車に乗り、栄養ドリンクを飲んで一眠りしてしばらくすると、やがて研修所と思しき建物の中へ。三望会会長・一条寺ヒロミチ(戸浦六宏)が出迎える。

道場のような所には、既に十人近い会員が集められ研修を行っていた。囚人服のようなジャージを着せられ、名前ではなく番号で呼ばれる彼らは「初志貫徹」「信頼努力」「忍耐気魄」の3つの言葉を大声で繰り返し唱和する。橘が参加したことで一条寺は講義を開始。経営学そのものを否定した内容で、居眠りをした会員には容赦なく竹刀が飛ぶが、一条寺の「愛の鞭」であることに会員は感動し嬉し泣きまでする。

橘は、行方不明の捜索願が出ていた大畑(石山律雄)を発見する。大畑からは「逃げないでください。全員がリンチに遭う」と怯えた声で話すが、布団が隣であったことから自分が小声で刑事であることを告げた。しかし翌日、なぜかその情報が筒抜けになっており拷問を受ける橘。何とかその場は切り抜けたが、会員の中にいる三望会のスパイまでは特定出来なかった。

一方、特命課は三望会の研修場所や目的を特定できずにいた。事務局員は会長と一度も顔を合わせたことは無く、事務局長や研修所長の名前さえ知らないのだ。橘は会員たちがどうしてリンチを受けてまでこの経営塾に参加するのが分からなかったが、一条寺は講義の中で「我が一条寺家は鎌倉時代からのさる高貴な方の財産を代々管理している。しかし、心無い親戚がこれを食いつぶす。だから私は、全く無関係の方々にこのM資産を活用してもらい、何十倍何百倍として返してもらいたいんです」と発言。ここに集まる中小企業経営者は、このM資産が目当てだったのだ。そしてこの犯罪のきっかけが、架空の資産をほのめかし資金繰りの苦しい中小企業経営者の弱みを付け込んだものだと確信する。

橘は会員の目を覚まさせるために思い切った行動に出た。まず会長秘書が電話をかけた際、市外局番から発信しなかったことを思い出し、窓を覆っている板やアルミ箔を全て剥ぎ取った。茨城の山の中だと思われていた研修所が、実は三望会事務局と同じ都心のビル内にあったのだ。三望会に騙されていたことを必死に訴える橘だが、一条寺に洗脳されている会員たちは協力してくれない。橘は一か八かの賭けで、自分が書いたメモを出前のラーメンの空食器の中に入れるだった。

特命課も三望会の目的を掴んだ。研修が始まってしばらく経った後に会員の家族へ、夫を研修から解放して欲しければ成約金60万円を振り込むよう三望会から連絡がある。それほど高額でもなく経営者には都合の付きやすい金額であることもあり、つい支払ってしまう。それでも、会員は定期的に会報誌が送られてくることもあり、三望会を信じて疑ってはいなかった。そうして会員約300名を騙し重なった額が約1億8千万円。これが狙いだったのだ。

橘と大畑を含めた4人が残された。大畑は研修所長に橘のことを喋ったことを自白。そして、橘も自分が特命課の刑事であることを明かした。野本が研修所でリンチにあって殺されたことも判明した。脱出を試みようとした直後、一条寺たちが現れる。4人のうち1人が一条寺の仲間であり、麻酔を打たれて意識が朦朧とする橘であったが、ビルの外に出たときに力を振り絞り決死の反撃に。ラーメン屋からの通報を受けて駆けつけた特命課の面々も加わって、三望会は逮捕され解散。大畑も家族のもとへ帰って行った。

橘がインテリヤクザの経営塾へ潜入する潜入捜査編。「人格」「地位」「名誉」の三つの望みを叶える三望会の事務局長が刑事コジャックこと森山周一郎で、いきなり黒幕登場か!?と思いきや、更にその上がいた。

「皆さんは経営学を学ばんとして、何を勉強されるのか?」今回は戸浦六宏の独壇場。前半の講義シーンなんて、戸浦六宏じゃないと出ない迫力。黒板にスラスラと筆記体でドイツ単語を書いての講義。さすが京都大学文学部英文学科卒業で元教師の戸浦さんだよ、すげえ。超カッコイイ。そして、最後に捕まり大滝秀治に腕を引っ張られているときの情けない表情も戸浦さんらしい。

ストーリーもなかなか凝っている。橘が森山周一郎に車に乗せられ眠らされるのだが、眠っている時間が長いため気がついた時には都心から離れた場所へ連れて来られたのでは?という錯覚を抱かせ*1、更には窓など外界と接する媒体を全て遮断し、鳥の声の録音テープで山奥だと思い込ませることで撹乱させようとするトリックはなかなか面白い。そして、三望会の恐怖の実態がじょじょに明らかになっていくのも上手い見せ方ではないでしょうか。

さて、資金繰りに悩む中小企業経営者をターゲットにした犯罪と言う事で、架空と現実を混同するわけではないですが何とも現代でも起こりそうな事件だなあ、という感想。他にも小坂一也が悲しき失業者を演じる「深夜便の女!」なんかも、失業率の高い現代に置き換えることの出来る話だと思います。

*1:実際は都内をぐるぐる回っていただけ。