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日本の片隅でひっそりと暮らすおじさんが書くブログ

必殺仕事人V激闘編 第5話「りつの家出で泣いたのは主水」

脚本:宮崎晃 監督:田中徳三 ゲスト:山口奈美 吉田哲子

りつ(白木万理)家出の夢にうなされた主水(藤田まこと)は、寝覚めが悪いまま出勤。訴えの中に「鬼を見た」との申し出があり、馬鹿馬鹿しく思うもなぜかノリノリな筆頭同心・田中(山内としお)の命により探索。鬼の目撃現場の近くには南蛮渡来の品を扱う商家・長崎屋が。暖簾も出さず戸は閉めたきり。主水が中に入ると内儀のぎん(山口奈美)、使用人のりん(吉田哲子)、はな(森下祐巳子)3人の女性が出迎える。亭主・利兵衛(千葉保)が病気であることと、番頭、手代は外回りの営業のため、女ばかりであるから戸締りを厳重にしていることを聞き、主水は疑い無く去っていく。

闇の会が開かれた。しかし、元締に呼ばれたのは加代(鮎川いずみ)ただ一人。強制的に仕事を請け負わされることに。依頼人はもうすぐ盲人になる初老の男。殺る相手は長崎屋内儀・ぎん、使用人りん、はな の3人。頼み料10両に不満を漏らす加代。主水の命により長崎屋へ潜り込む加代だが、ぎん が利兵衛に麻薬を盛るところを目撃してしまい囚われの身に。加代と一緒に潜入していた政(村上弘明)は、不運にも悪女が放つ拳銃の流れ弾が当たってしまい足を負傷してしまう。加代は土蔵で監禁され、「コンニチワ。コレノンデクダサイ」と異国人・カール・グレイブ(ダッグ・マクルーア)に自白剤を飲まされてしまう。ちなみに、冒頭の「鬼」とはグレイブのこと。

竜(京本政樹)の助けと主水のサポートもあり、加代と政は長崎屋を脱出する。飛び道具を持っているんじゃ勝ち目が無いと、主水は助っ人を雇うことを提案。壱(柴俊夫)に繋ぎを取るよう加代に命じる。壱呼び出しの凧を揚げる中、依頼人に出会う加代。依頼人の名は惣兵衛(下元年世)と言い、昔長崎一の金細工師で ぎん の元亭主。ぎん を幸せにするため一心不乱に働き続けたが ぎん との心はすれ違い、ぎんはグレて麻薬の道へ。麻薬に犯された ぎん、りん、はな は惣兵衛を崖から突き落とし盲目にしてしまったのだ。しかし、今回の仕事は ぎん への恨みではない。ぎん を生かしておけば、世のため人のためにならず害毒が流れると思い、元締に依頼したのだ。

主水たちは早速壱たちとギャラの交渉。「年末ですし」と10両のうち6両を持っていかれ「どうも〜」。政も思わず「冗談じゃねえよ!俺だって銭は欲しいよ!」とブチギレ。

長崎屋の仕事では、飛び道具をかわしながら悪女とクレイブを次々と仕置。ぎん は逃げる途中で昔の亭主・惣兵衛と再会する。「あたしは、本当にあんたのことが好きだったんだよ!」ぎん は叫ぶが惣兵衛の心には届かない。背後から ぎん を呼ぶ声。主水の一太刀。目が見えないはずの惣兵衛が「お役人様、ありがとうございました……」と呟き頭を下げるのだった。

今回の主水、えらく弱気。拳銃相手ではさすがにヤバイと感じるか。前半は加代の出番多し。大袈裟な演技も無いが、潜入に向いていないのは相変わらず。自白剤を飲まされた後に助け出された気だるい演技が色っぽい。この翌年には里見浩太朗版『江戸を斬る!』のお仙さんか……と少し感慨深くなる。

後半は依頼人の吐露と助っ人との交渉、そして殺し。この依頼人の吐露により、最後の主水の殺しが活きてくる。仕置シーン、竜の殺し終了の後カメラが引いていき、右端から政が画面に入ってくる……というのが目を惹いた。その後の政の死んだふりもなかなか面白い。異人さん相手には助っ人2人が挑戦。笑みを浮かべながら瞬間移動する弐(梅沢富美男)が不気味妖艶で美しい。一瞬の隙を突いて大ジャンプして飛び掛る壱がカッコイイ。主水の殺しは激闘編初のバラードによる殺し。惣兵衛と ぎん の情念を見守った後居合いで一太刀。

妻のために一生懸命尽くした夫だが、その想いは届かず妻は悪女となって数え切れない悪事を働いた。死が近づく中、数十年ぶりに再会した夫に訴えた愛の言葉は今や届かず、すぐ後に妻は一生を終えた。夫が依頼した殺し屋の手によって。

心の微妙なすれ違いが、悲しい結果を生んでしまった。依頼人も決して救われない話に仕上がっている。

脚本:宮崎晃

必殺シリーズではこの話だけしか参加していない。60年代〜70年代、監督では『泣いてたまるか』、脚本では『家族』『男はつらいよシリーズ』『わが愛の譜 滝廉太郎物語』などに参加。山田洋次原作・監督作品への参加が目立つ。

アニメにも積極的に参加し『あらいぐまラスカル』『ペリーヌ物語』『南の虹のルーシー』などが代表作。80年代後半からはアニメ中心の活動となるようだ。

この大ベテランがどういう経緯で必殺に参加したのか分からないが、あと何本か氏の必殺作品を見てみたかったように思う。