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日本の片隅でひっそりと暮らすおじさんが書くブログ

必殺仕置屋稼業 第7話「一筆啓上邪心が見えた」

脚本:村尾昭 監督:蔵原惟繕 ゲスト:今井健二 入江若葉 河原崎次郎

せん(菅井きん)とりつ(白木万理)に着物をねだられ迷惑する主水(藤田まこと)。その主水の耳に「仕置屋が捕まった!」の声が。噂の殺し屋・仕置屋を狙い"マムシ"の異名を持つ同心・堀内以蔵(今井健二)はその容疑者を捕え拷問死させるが白と判明。上役・村野(宗方勝巳)も実在するかどうかさえも分からない仕置屋を執拗に追う堀内の行動に困惑気味。

そんな危機一髪な状況にも係わらず仕事を持ち込む おこう(中村玉緒)。それも二つの大仕事。まず一つ目、依頼人は呉服屋帯清の女将・おちか(入江若葉)。婿養子の夫・茂作(花上晃)が実はホモで役者の清十郎(浜田雄史)とベッタリしておりセックスレスになってしまい、別れを切り出したところ暴力を振るわれているから殺して欲しいとのこと。二つ目は、依頼人がその婿養子・茂作。おちかと婚前から付き合っている遊び人・矢之助(河原崎次郎)を殺して欲しいとのこと。二つの依頼のどちらかに嘘がある。主水は、どうも気乗りしない捨三(渡辺篤史)と印玄(新克利)を金で釣り探りを依頼する。

おちかと矢之助が密談を交わした間もなく後、清十郎と茂作が心中する。しかしそれを他殺だと言い切る堀内。そして、演技過剰に泣き叫ぶおちかを怪しみ見つめる主水。その容疑者として市松が捕えられ事態はより緊迫感を増す。「叩けば埃が出る」堀内は市松を仕置屋と睨み徹底マークするが、機転を利かした主水によって市松は一番安全な番屋の牢内へ。

更に、堀内はおちかにも疑いの眼差しを向ける。心中事件が仕置屋の仕業ならば、それを依頼した人間がいる。堀内はその依頼人がおちかだと睨んだのだ。ちょうど帯清へ来るおこう。おちかはおこうが仕置屋に繋がっているらしいことを堀内に耳打ちするが、危険を察したおこうはおちか相手に捲くし立て惚ける。しかし、堀内の勘はごまかせず岡っ引きが一人マークすることに。もちろん、堀内は今回の心中事件がおちかと矢之助の仕組んだものであることは看破しており、おちかは自分の体と帯清の身代を賭けて許しを請おうとするのだが、堀内の目的はあくまで仕置屋であると決意は変わらない。

遂におこうまでもがマークされてしまった。主水は今回の殺しに一つのテーマを設ける。それは「仕置屋の手口だとは思われないように始末すること」だ。早速印玄が矢之助を仕置する。堀内は番屋の市松を確認するが、市松は牢の中。しかし、次の仕置のため主水は市松を脱牢させて、おちかと堀内を見事仕置。

主水は仕置の後、「堀内はおちかを手篭めにしようとした際に刺された」として村野に報告。金一封モノの手柄だが、日頃の職務怠慢のためプラマイゼロで悔し泣き。

今井健二が恐すぎる執念の同心・堀内を演じる。どこからどうやって仕置屋の存在を知ったのか分からないが、仕置屋を追い詰めるのに十分なスペックだけに主水及び視聴者の緊張感も張り詰める。特に、おちかに事情聴取する時の誘導尋問なんかお見事。っていうか、今井健二クラスの強面警察官に事情聴取されたら、やましくなくてもしどろもどろになるだろうな。入江若葉が美しすぎる。

おちかと矢之助の謀殺の件も、全て堀内の仕置屋探索の糧にされてしまうという展開の馬力も凄い。そして、奉行所監視の中での仕置シーン。仕置の前に女とヤリまくる印玄の殺しからスタート。印玄の屋根落下では矢之助が「止めて止めて止めて」。下にいるおちかが「止まって止まって止まって」と交互にインサートされる爆笑のやりとり。その おちかを仕置する市松のシーンではストップモーションを効果的に活用した演出。蔵原惟繕監督はストップモーションを上手に使う印象がある。この後の「一筆啓上欺瞞が見えた」のクローズでも山田五十鈴に対して重い最期の意味を持たせる形で使っているし、果ては『新必殺からくり人』の「三島」でも加賀まりこに対してアングルを変えながら三段階の急激なアップとストップモーションを繰り返す印象的な演出を施している。後期シリーズでは原田雄一が多用しているけれど、使い方は蔵原のほうが一枚上手か。

しかし今回の最大の見せ場は、市松が亀吉に食らわす高速往復ビンタではないだろうか。これも必殺史上屈指の名場面に違いない。この後の堀内が「あーあ、こんなに腫れちゃって」というセリフがちょっとかわいい。