脚本:石森史郎 監督:黒田義之 ゲスト:梅津栄 藤舎推峰
十六夜の晩、おりく(山田五十鈴)は美しい横笛に合わせて三味線を奏でる。まさにその時殺人事件が発生。殺されたのは江戸の商家・能登屋。筆頭同心・田中(山内としお)は事件当時三味線の音が聞こえていたという証言から殺人犯を三味線弾きと断定。主水(藤田まこと)は通りがかった勇次(中条きよし)と おりく に注意を促す。主水は、一緒にいた笛吹きを調べれば何か分かるのでは、と秀(三田村邦彦)に調査を依頼するが断られ、加代(鮎川いずみ)に改めて依頼する。加代の調べでは、当夜の横笛演奏者は能勢東風(藤舎推峰)という評判の笛吹きと判明する。
ある晩、主水とすれ違った老人・彦六(梅津栄)は大黒屋へ。主人を起こし詰め寄る彦六。実は彦六はその昔江戸を騒がせた「紅蓮小僧」という盗賊の頭だったのだが捕えられ八丈島へ送られていた。しかし、自分を裏切った手下に復讐するため脱獄してきたのだ。まず、手下であった能登屋を始末した。そして今度は大黒屋を始末しようと忍び込んだのだが、今では堅気となり、更には罪滅ぼしのため仲間の娘を妻に迎えた大黒屋の優しさにほだされ、見逃そうと店を離れようとしたその瞬間、大黒屋夫妻は殺されてしまった。どうやら押し込み強盗らしい。翌日、奉公人たちは全員大黒屋を出て行き番頭の耕作(白川浩二郎)だけが残ったが、今回の押し込み騒ぎの黒幕はこの耕作。連れの鬼吉(阿波地大輔)らを引き込み店を強奪したのだ。
東風はその彦六の後を付け「あなたは私の父親ではないか」と詰め寄る。東風は母から何もかも聞いてしまったのだ。しかし、由緒ある能勢家の跡取りが、盗賊の落とし種であることが知られてはならない。母は彦六が東風に会うことを許さなかったが、東風は真実を知るため彦六に直接会うことにしたのだ。必死に否定する彦六だが、その素振から東風は彦六が真の父親と確信する。そしてその話の内容を、東風をマークしていた加代は知ってしまったのだった。
奉行所も能登屋が昔紅蓮小僧という盗賊の一味であったことと、彦六が島抜けをしたことを突き止め彦六の手配書を全員に配布。その一方で、三味線弾きについても警戒を厳重にし、夜の見回りを強化することとなった。今回の事件一連を紅蓮小僧の仕業に仕立て上げた耕作だったが、本物の紅蓮小僧・彦六が大黒屋の仇を討つために乗り込んだ。しかし多勢に無勢。返り討ちに遭ってしまう。東風は父の恨みを晴らすため加代に仕事人を依頼。
奉行所の警戒網が厳しくなっている最中の仕事。更に三味線弾きが狙われていると言うことで おりく を心配する主水。仕置は見事成功するが、奉行所によって大黒屋が取り囲まれてしまう。おりく は同心の目を惹き付けるため自ら三味線を演奏し同心たちを撹乱。そして、主水に「勇次を頼みます」の一言を残して江戸を去るのだった。
梅津栄先生が、悪事に手を染めながらも父親として苦悩する役柄を好演。男色でも極悪人でもない魅力が現れている。そして能勢東風を演じるのが、横笛の第一人者である藤舎推峰と言うのもポイント。
今回は おりく の退場編ということもあり、仕置シーンと おりく 退場劇を合わせて描かなければならないため本筋は少々詰め込んだ感あり。大黒屋から抜け出せない仕事人たち。そして、障子に映った捕方の影に身動きできなくなる おりく とまさに絶対絶命。元締である おりく 自らが囮となって逃がすわけだが、その姿に胸が痛んだのは勇次。おりく が江戸を去っていく姿を、寂しさがこもった表情で見つめるのだった。
ラストのせんりつコント。鯉幟が主水の着物に。どういうコスプレやねん。ちなみに、りつが「もう子供は授からないと諦めました」と言うが……その諦めは商売人以降の話?だとしても、商売人での「りつ懐妊」については、この頃の仕事人では既に黒歴史なのだが。