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日本の片隅でひっそりと暮らすおじさんが書くブログ

必殺仕置屋稼業 第4話「一筆啓上仕掛が見えた」

脚本:中村勝行 監督:大熊邦也 ゲスト:竹下景子 大滝秀治 山本学

おこう(中村玉緒)の店の近所で相次いで火災が発生。おこう の店も嫌がらせを受けており、遂には死人が出た。この一件は数多くの風俗店を経営する桔梗屋仁左ヱ門(大滝秀治)が黒幕であり、非人道的なやり方で住民を立ち退かせ土地を買い上げる卑劣な行動に、住民の怒りは頂点に達していた。火災現場に現れて心無い言葉を投げかける桔梗屋に思わず殴りかからんとする住民たちを説得したのは「世直し京楽」との異名を持つ江戸で人気のジャーナリスト・高田京楽(山本学)。京楽はこの事を必ず記事にすると約束し、早速現場検証を行うのだった。

小間物屋を営む美少女・お美津(竹下景子)は おこう とも懇意であるのだが、ある日デートへ出かける途中京楽に遭遇。京楽からは「母の形見の簪」をプレゼントされ猛烈に迫られるのだが、その誘いを断る際に簪を折ってしまい、更には京楽の額に傷まで負わせてしまう。何かが吹っ切れた京楽は、そのまま桔梗屋の店へ行き突撃取材。しかし翌日書かれた瓦版には、お美津と思しき若い女性が恋に狂って放火を繰り返す、と面白おかしく書かれていた。この瓦版を信じきった住民は、お美津を村八分。お美津は社会的に抹殺されてしまい、挙句首吊り自殺をしてしまうのである。

おこう だけはこの記事に猛反発。しかし、版元は「お美津なんて名前はどこにも書いていない」などと言い逃れをして相手にしない。おこう は主水に恨みを晴らしてもらうよう依頼する。捨三(渡辺篤史)の調べにより、急に金回りが良くなった火消しの伝八(横沢祐一)と桔梗屋との繋がりから、立ち退きに応じない頑固な住民宅へ伝八が火付けを行い、無理矢理に立ち退かせていたことを突き止める。しかし、問題の瓦版屋に記事を売った奴の確認が取れていない。更に調べを進めると、それはどうやら京楽の仕業であることが判明。印玄(新克利)が伝八を、市松(沖雅也)が桔梗屋を、主水が京楽を仕置することになったわけだが、京楽宅には締切が過ぎるまで瓦版屋の編集者が入り浸っている。締切が過ぎる時間が役所への出勤時間と重なるのため、役所をずる休みして更には せん(菅井きん)とりつ(白木万理)をダシに使ってまで仕置に向かう主水。しかし京楽は遅筆で時間になっても編集者は帰らず、まさかまさかで仕損じてしまう。次のチャンスは明後日。しかしこの日は主水宅の離れが完成し宴会が催される日。ますます顔色が変わる主水。

離れ完成祝いの日。主水は髭を剃りに行く僅かな時間を利用し京楽宅へダッシュ。押し込み強盗を装い一瞬の早業で京楽を仕置して脱出。見事成功するのだった。

もっこり山へ行くのか!?」の大滝秀治。でもこの作品では悪役全盛期の恐い顔で熱演。今の秀治しか知らない人が見たらビビるだろうな。同じく山本学も極悪人。って言うか、この人が必殺で悪役をする時には、何か狂気と言うかただならぬ考えが悪事のきっかけだから更に面白い。暗闇仕留人の佐島昌軒は、南田洋子演じる未亡人に恋焦がれる余り、その煩悩を発散するため柱に長年頭突きを繰り返し、柱が頭の形に変わり更には頭突きで墓石さえも砕いてしまう脅威の力を身に付けてしまう強烈な悪人だったが、今回も竹下景子に振られたことでプッツンし、逆恨みで火付けの犯人にしてしまうと言う役柄。簪を折られ額に傷を負った時の、あの何とも言えない表情が恐い。

今回の演出はとにかくカッコ良過ぎ。カッコイイを通り越して少々キザ?特に市松が桔梗屋を始末する際には、折鶴の先端に竹串を装着させ、遠距離から飛ばして盆の窪へ一突き。更にはその折鶴が血を吸って真っ赤になると言う洒落た演出。その後に桔梗屋の顔が青くなるライティングも印象的。対照的に、印玄の殺しはギャグそのもの。火付けが終わった後にやって来て、「火消しはお前の役目だ」と伝八を火の上に寝転がらせる。伝八は「消して消して消して」と繰り返し、その後屋根の上で。「一番纏はこの印玄だー」と宣言して突き落とす。最早意味が分からん。しかし、印玄にかかった悪人はどうして同じフレーズばかりを繰り返すのだろうか。謎だ。主水の仕置は難関突破編。無理矢理時間を作って京楽を仕置しそのまま自宅へ帰り何食わぬ顔でせんりつの前へ現れるのだが、足下が外の泥濘で濡れたことを現す泥の足跡を見せ付けるリアルな演出が憎い。しかし、せん もいくら腹が立つからって、これから建て増しのローンを払っていかなければいけないのに、棟梁の前で「役所の給金が3割カット」なんて言わなくても良いのに。

前半は竹下景子が社会的に抹殺される過程を描き、後半は主水の仕置の難関突破。どれも上手くまとまっている。中村、大熊コンビは次作の仕業人でも難関突破編を作り出し高い評価を得ている。『新ルパン三世』のブロードウェイシリーズを手がけた浦沢、青木コンビのように、特定のコンビによる特色ある作品とされているが、今回の話はそのきっかけと言うか方向性のように見て取れる。

必殺仕置屋稼業 VOL.1 [DVD]

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