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日本の片隅でひっそりと暮らすおじさんが書くブログ

必殺仕事人 第25話「裏の裏のそのまた裏に何があるのか?」

脚本:國弘威雄 監督:高坂光幸 ゲスト:須賀不二男 綿引洪*1

「犯さず殺さず」の手口で知られる盗賊・闇の十兵ヱ(藤沢薫)一味だが、その十兵ヱの名前で凶悪な連続強盗殺人事件が発生。奉行所も捜査に躍起。主水(藤田まこと)も連夜の夜回りに駆り出される。

夜回りの最中、主水を付けねらう人影。主水に襲い掛かるが逆に不利な立場に。その人影は実は女で、名前は佐和(津山登志子)。闇の十兵ヱの娘を名乗り主水に十兵ヱの仇を討って欲しいと仕事を依頼する。殺す相手は巳之吉(綿引洪)。病身の十兵ヱを殺し、自ら「二代目」を名乗り佐和を無理矢理モノにした男だ。しかし、佐和は巳之吉に強い憎悪を抱いており仇討ちのチャンスを窺っていたのだ。そして仇討ちに挑む佐和だが、力及ばず返り討ちに。金を受け取った主水の姿を見て、自分たちが仕事人に狙われていることを察知した巳之吉は仕事人グループとの対決を決意しメンバーリサーチを開始する。一方、主水たちは手始めに巳之吉たちの盗っ人宿を調査することに。

ある晩、秀(三田村邦彦)の家に押し込みが。明らかに命を狙った動きから、巳之吉の手下の犯行であることを察知。しかし、そのどさくさに紛れ左門(伊吹吾朗)の娘・美鈴(水本恵子)が巳之吉の手下にさらわれてしまう。左門は奉行所に被害届を出すが、現場検証に来た与力・伊沢(唐沢民賢)の、明らかに無理矢理な尋問により闇の十兵ヱ一味に加担する容疑を掛けられ番所に連行されてしまう。牢内で監禁される左門だが、主水に対し美鈴の死を受け入れることを含めた自らの仕事人としての覚悟を吐露。主水は秀にも協力を要請するが、相手の素性が分からないのに、相手は自分たちを知っていることへの恐怖と、美鈴の命が犠牲になってもやむを得ない主水の態度に不信を抱き協力を拒否。主水は半吉山田隆夫)と二人で仕事を進めることとなる。

主水は十兵ヱと義兄弟の契を交わした猿の三次(須賀不二男)を訪ねる。主水とは奉行所の牢内にいた頃からの旧知の仲だ。主水は巳之吉によって十兵ヱとその娘・佐和が殺されたことを三次に告げる。三次は、そこまで分かっていながら奉行所同心として裁かない主水の態度と、惚けた振りをしていた奉行所での働きぶりを鑑み、主水が殺し屋であることを看破する。そして、主水への協力を約束。義兄弟であった十兵ヱの恨みを晴らして欲しいと改めて依頼するのだった。

三次から盗っ人宿と次のターゲットを知らされた主水は、まず盗っ人宿である上州屋に踏み込み美鈴を救出。左門を連れ出し、巳之吉がターゲットとしている松前屋を目指す。そして、不貞腐れる秀に「何やってんだよ!素直になれよ、素直に!」とハッパを掛ける半吉

松前屋の蔵の前で、仕事人チームと外道働きの盗賊一味との殺し合いが開始された。

"必殺シリーズ鬼平犯科帳"といった作品。『新必殺からくり人』の府中が安倍徹郎版必殺鬼平だとすれば、今回は國弘威雄版必殺鬼平といった感じか。須賀不二男の老いた盗賊も味わい深くて良い。特に、主水を仕事人だと看破する件は鳥肌が立つ。

物語は全編暗いムードで進んでいく。何より主水の表情が終始暗い。仕事の請負から被害者が殺害された現場の目撃、素性が分からない凶暴な盗賊一味を始末する難しい仕事への苦悩、そして仲間に見放されて一人で調査遂行を行う孤独感、など、この話からはチームリーダーとしての主水の悲壮感がヒシヒシと伝わってくるのだ。更に特徴的なのは、この話は仕事人前半のトーンをそのまま受け継いでいること。鹿蔵元締の存在が前提となる作劇がなされているのだ。左門が主水に対し仕事人の覚悟を吐露する中に「俺は元締に勧められてこの道へ入った。それで今日まで生き延びてきた。その恩もある。そのかわり数え切れないほどの人も殺してきた。」という件がある。この"元締"と言うのは、もちろん直近の元締である おとわ のことではない。鹿蔵元締のことだ。つまり、本来の『必殺仕事人』は鹿蔵元締が最後まで主水たちを束ねることが根底にあり、全26話前後で最終回を迎え、必殺シリーズ自体を終了させる予定だったわけだが、その残り香がこの話に立ち込めているのだ。そしてそれは、主水が秀に向ける言葉「(秀の「あんたそれでも人間かよ!?」に対し)人間じゃねえや……人間じゃねえから、こんな仕事してるんだ」の台詞に凝縮されていると思う。終末へ向けてじょじょに枯れ果てていく殺し屋の心情が垣間見える。

高坂光幸独特の演出が殺陣のシーンに現れている。豪快に賊を殺していく左門と秀。乱戦の最中ろうそくが床に落ちて僅かな灯火が残る。頭である巳之吉に止めを刺す主水。止めを刺された巳之吉が絶命し、盗賊全滅で仕事人たちが撤退した後、残った灯火が消え屋敷中は真っ暗に。命の炎と結びつけた、光と影の美しさが際立つ演出。でも、この演出に似た方法は高坂自身が『必殺商売人』の「夢売ります手折れ花」で既に使用している。きっとこういう手法が好きなんだろう。

さて、今回は何と せん@菅井きん が登場せず。せんりつがレギュラー化された『必殺仕置屋稼業』以来初の欠席ではないだろうか。劇中では「風邪で寝込んでいる」との理由付けだが、その分りつ が長刀を振り回し せん の馬力を十二分にカバーしている。