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日本の片隅でひっそりと暮らすおじさんが書くブログ

必殺仕事人V風雲竜虎編 第16話「白か黒か大商人誘拐騒動」

脚本:鶉野昭彦 監督:山根成之 ゲスト:宗方勝己 上野山功一 田畑猛雄

江戸城の畳総入れ替えの入札を3つの大店である大蔵屋、備前屋、奈良屋で競うことに。落札者は公儀御用達の看板も授けられるとあってそれぞれ必死。ところが大蔵屋善兵衛(宗方勝己)が突然何者かに誘拐され、更には備前屋伝一(水上保広)が殺されるハプニングが発生。残ったのは奈良屋忠兵衛(上野山功一)ただ一人。善兵衛の妻・お種(江崎和代)は「大事な入札を前にトラブルは避けたい」と奉行所には通報しないことに。しかし、橋番の主水(藤田まこと)の元へ大蔵屋の奉公人・おみつ(長谷川直子)が「何とかして」と事の次第を内々に知らせてくる。

蝶丸(桂蝶丸*1)の夜叉堂へは備前屋伝一の妻・志乃(吉田哲子)がやって来て夫の恨みを晴らして欲しいと依頼。お玉(かとうかずこ)と影太郎(三浦友和)もこの仕事を受けることに。一方、奉行所も大蔵屋誘拐の件を察知し内偵を進めることとなり、主水は大蔵屋張り込みの任務を負うことに。主水は政(村上弘明)らを集め「大蔵屋誘拐と備前屋殺害の件は一本の糸で繋がっている」と判断。大蔵屋に厳しく目を光らせるよう仲間に指示を出す。奉行所は唯一無事だった奈良屋に目を付け、与力・鬼塚(西田健)が直々に取り調べるが無関係を主張。しかし捜査指揮を任された彦坂(田畑猛雄)の強引な命により奈良屋を捕縛することに。

さて、大蔵屋は店を閉めたままだが、主水が踏み込むと「昨晩身代金要求の投げ文があった」と お種が申し出る。昨晩大蔵屋を見張っていた政に確認するが、大蔵屋へは誰も来なかったらしい。お種はなぜ嘘をつくのか。そして、大蔵屋から暇を出され故郷へ帰る おみつ から「つい先日お種と善兵衛が会っていた」との目撃談を聞き、ますます お種に疑いを向ける。

お種が動き出す。ヤクザの聖天一家へ入っていくお種。主水が詰問すると、お種は聖天一家の親分・茂兵衛(下元年世)の腹違いの妹であり、善兵衛捜索には聖天一家の協力を仰ぐつもりであったため、奉行所には通報しなかったのだと言う。そして、遂には善兵衛が帰ってくると言うのだ。入札期限当日。お種の予言が的中し、聖天一家の尽力により善兵衛は無事大蔵屋へ帰ってきた。衰弱してはいたが、そのまま江戸城へ行き畳総入れ替えの請負を独占入札で見事落札。奈良屋忠兵衛は入札期限当日も獄中に捕らえられており、挙句獄中死してしまう。

今回の一件を影で操っていたのは、他ならぬ彦坂であり、誘拐騒動は聖天の茂兵衛たちの協力によって大蔵屋が落札するように仕掛けた大芝居だったのだ。

必殺からくり人』「粗大ゴミは闇夜にどうぞ」に似た展開になるのかな、と思いきや案外そうでもない。誰が悪人か分からないミステリー的な雰囲気の出だし。入札を言い渡す幕府役人の山口幸生、大蔵屋の宗方勝己、備前屋の水上保広、奈良屋の上野山功一……誰が黒幕でもおかしくない面子。しかし備前屋が脱落し、捜査指揮に現れた彦坂@田畑猛雄と入れ替わるが、こちらは捜査指揮の強引さから黒幕の一人だと容易に予想出来る展開に。結局、上野山功一は今回全く無関係な商人役であり、悪人ではない意外な役柄。必殺シリーズで上野山功一が悪人ではなかったのは大変珍しい。ひょっとして今回だけなのでは……?意外性のあるキャスティングが面白い。

大蔵屋が身を隠している最中や、自分の店へ帰ってくるまでの過程をもう少し丁寧に描いて欲しかった。彦坂、茂兵衛と次々に新しい登場キャラクターが出てきて物語をかき回し、情報を小出しにしながら進めていくのは舞台脚本家である鶉野昭彦の得意分野らしく目を離せない展開に仕上がっている。しかし一番最悪なのは演出。冒頭、山口幸生が入札手順を読み上げるシーンでは、5段階くらいのズームアップが鬱陶しいし(剣劇人最終回で菅貫太郎が悪事を語る場面でも同様の演出。こちらは良かった)、鬼塚@西田健と奈良屋のやりとりでは、鬼塚→奈良屋→鬼塚→奈良屋…と何度も切り替わるカメラワークがくどすぎる。主水と茂兵衛のやりとりでは、茂兵衛が主水に お種の生い立ちや今回の事件について語るシーンで、お種の表情をサブリミナル的に何度も挿入する演出。これもかえってくどい。中盤は演出の無駄が目立っていたように思う。反面、殺しのシーンでは、影太郎の南京玉簾が有り得ない形で悪人の首を貫通するなど奇抜な表現、そして、主水が彦坂を始末するときの豪快な殺陣は迫力があった。大刀で背後から突き刺し、その後横に斬り捨てる殺しは前期シリーズの力強い主水を彷彿としていただけに勿体無い。

出来れば、大蔵屋は主水が始末して欲しかったな……と思うのは、時代劇専門チャンネルで『必殺仕置屋稼業』を見ているからだろうか。