umikaze.blog

日本の片隅でひっそりと暮らすおじさんが書くブログ

必殺橋掛人 第13話「子連れ剣客の魔剣を探ります」(終)

脚本:中原朗 監督:松野宏軌 ゲスト:有川博 宗方勝己 速水典子

江戸地図最後の仕事は江戸城。浮かび上がったのは「高澤藩の家紋」だった。高澤藩と言えば、将軍のご落胤・光千代を与えられた藩として知られるが、頼み料はその高澤藩の藩札。合計千両分の藩札ということで最後の大仕事に相応しいとやる気満々。さて、お光(西崎みどり)は一人の子供に出会う。父を待っているのだと言う。その父は、高澤藩からの追っ手三人を一瞬の内に斬り倒した凄腕の剣客。柳次(津川雅彦)も思わず「まともにやりたくねえ」と本音が漏れてしまう。その剣客は何者かの差し金によって高澤藩の若君を殺害したらしい。高澤藩に探りを入れる柳次。その柳次は偶然、剣客と家族ぐるみで親睦を深めることに。日下部伊織(有川博)と名乗るこの剣客は、息子の一之助(竹本貴志)と一緒にアテの無い旅をしているのだという。

高澤藩は押し付けられた将軍家のご落胤騒動に難儀。この騒動の黒幕が側用人の田所外記(宗方勝己)と、大奥中蟖・お国の方(速水典子)。将軍を意のままに操り、更にはご乱行が過ぎる将軍のご落胤を各藩に押し付け、その藩の跡目を継ぐ者を日下部の手を借り始末し自分の息のかかった藩を増やしていくのがこの二人の悪事の筋書き。自らに反発する老中たちに対し、絶対的な権勢を維持するのが目的なのだ。大奥を調べようとする柳次だが、濱松屋は大奥御用達の看板を掲げていないために大奥へは侵入できない。そこで、宿下がり中の奥女中を垂らしこみ、見事田所と お国の方の悪事を聞き出すことに成功。

次にマークしたのは日下部であるが、日下部もまた柳次の正体に気付いていた。一之助を前に対峙する二人。お咲(安孫子里香)が自分の裏稼業を知らないのに対し、日下部は親子で冥府魔道の地獄道を覚悟する正反対の立場であるがゆえに、お互い一歩も手を出せないまま別れることになる。高澤藩では田所の計略によって家老の加納(溝田繁)が殺され、依頼人が加納であることの確認も取れた。いよいよ最後の仕事の段取りにかかる橋掛人たち。

新吉(宅麻伸)が お国の方を、おくら(萬田久子)と松(斉藤清六)が田所の手下を始末し、柳次は田所を始末する。田所の屋敷を出たところで柳次を待ち伏せる日下部。「悪人と言えども恩人だ。知らん顔をして行けば悔いが残る。……頼みがある。死んだ時には、子供の事を頼む」「俺もだ。娘を頼む」と子を持つ親同士の殺し合い。決着は柳次に軍配が上がった。一之助を引き取り我が家へ戻ると、お紺(高部知子)が帰ってきており、更には若い男を作って出て行った お藤(鷲尾真知子)までもがまた戻ってきた。合計五人家族になった柳次一家。藩札は高澤藩が取り潰しとなったため紙切れとなってしまったが、それでも柳次一家は笑顔が耐えない。「一家団欒、平和が一番!」

橋掛人結びの一番。武装乳母車は無いにしろ、『子連れ狼』をモチーフにしたとしか考えられない凄腕の子連れ剣客が登場。前話の冒頭で お紺が家を出て行ったのも、日下部と同じく「父一人子一人」の状況を作り対比させたかった意図があったのでは?後期非主水シリーズの常連であった有川博が二刀流の凄腕剣客日下部伊織を熱演している。また、田所外記には『仕置屋稼業』の村野様でおなじみの宗方勝己が出演。津川雅彦と宗方勝己と言う、これまたファンには嬉しい対決も見物。宗方、有川両氏はそれぞれ主水の上司を演じているというのもこれまた奇遇。しかし、仕切人の最終回は『十手無用』で、今作の最終回は『子連れ狼』か。更には大奥の黒幕の名前が「お国」。新吉といい、お国といい、名前とアイデアまで『仕切人』から流用か?

今回はそんな訳で柳次の出番が多い。高澤藩への営業活動に始まり、奥女中の火照りを鎮め情報収集。騎乗位でヒイヒイ言わせるテクニシャンの柳次だが、プレイの最中の顔は完全に悪役の顔になっているのが面白い。最後は日下部との対決。戦わなくても……といったところだが、男同士の対決で見事に勝利を収める。対決の経過が少々端折られすぎている感もあるけれど。対決終了後、一之助は何も知らず柳次の養子になったが、自分の父親を殺したのが柳次と知る日はいずれ来るだろう。それでも、柳次一家の明るさがあれば、そんな負のエネルギーは消し飛んでしまいそうな気もするが。

さて、仕事料が大金で更に藩札という時点で嫌な予感がプンプンする今回の仕事だが、案の定ただの紙切れとなってしまった。おくら と松もせっかく商売替えをしたというのに。新吉、お光は江戸を離れ一人旅。柳次一家だけは、今日も姦しい家族に囲まれ笑顔が耐えない日々が続く。「江戸とおさらば」「仲間の死」など何かと暗い定めにある必殺シリーズの最終回だが、こういったアットホームな終わり方だって、たまには良いのでは?と思わせる、かえって新鮮な終わり方だったように思う。