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日本の片隅でひっそりと暮らすおじさんが書くブログ

必殺まっしぐら! 第11話「相手は向島の元締」

脚本:中原朗 監督:水川淳三 ゲスト:潮哲也 内藤剛志 國村隼

天保4年10月24日。滝沢馬琴の日記によれば、この頃「天保の大飢饉」がいよいよ庶民を直撃し、米を求めて彷徨う町人が後を絶たなかったという。打ちこわしのために下総屋を襲おうとした町人たちだが、その下総屋は一家皆殺しに遭っていた。一方で、米を振る舞い「仏」と呼ばれる善七(潮哲也)と お久(朝倉佐和)の夫婦。しかし今回の標的はその善七であった。他に上州屋(西山辰夫)などといった汚い米問屋が数多くある中で、どうして善七が。秀(三田村邦彦)たちは裏を取ることに。

上州屋では、暴徒に立ち向かうための用心棒を雇っていた。その中には、北辰一刀流の剣客・平手造酒(内藤剛志)の姿も。上州屋には お銀(秋野暢子)が潜り込んでおり、二人は良い仲に。一方で、十年前に同じような事件で押し入られた伊勢屋の娘で、今回の頼み人である夜鷹(丸山秀美)と情を通わせる綾麻呂(笑福亭鶴瓶)は、裏の仕事から足を洗って夜鷹と一緒に暮らすことを決意する。

善七をマークする秀。ある晩、黒装束に身を包んで上州屋に押し込むのを目撃。しかし、途中で秀を狙う刺客・五平次(國村隼)に邪魔をされてしまう。上州屋は殺害され、用心棒も全滅。途中で上州屋から逃げた平手は憤りを感じ自暴自棄となり、北辰一刀流の道場からも破門されてしまった。あての無い旅に出る平手を見守る お銀。そして夜鷹も善七一味により殺されてしまった。号泣する綾麻呂。この一件は十年前の事件にも繋がっていたのだ。

善七の正体は盗賊一味の頭で、十年前の伊勢屋の押し込みも善七たちの仕業だった。押し入った商家は一家皆殺し、盗んだ金を米俵に詰め替えて運ぶのが手口。表向きは人望の厚い「仏」だが、それは米問屋の株仲間に入るための芝居だった。米問屋として新たな出発をした善七を祝う催しの最中に一味を始末する秀たち。そして、秀が善七を始末した後刺客である五平次が襲い掛かる。五平次を始末した後ふと目をやると、そこには向島の仁十郎(藤岡重慶)。急いで後をつけるが寸でのところで見逃してしまう。しかし、仁十郎が消えたと思った場所から現れたのは、何と直属の元締である宗右衛門(睦五朗)であった。

いよいよサブタイトルに相手方の元締の名前が出てきた。向島の仁十郎自身も、冒頭で宗右衛門とのパワーゲームが不利になったことに苛立ちを見せており、作品自体が佳境に入ってきた印象を受ける。

殺しの相手が「仏」と呼ばれる極悪人であることは時代劇の王道であるが、その影で秀、綾麻呂、お銀のそれぞれの想いが交錯した話でもあった。秀は若紫の心境の変化に戸惑いを見せる。前話で若紫の面倒を見ていた太夫が亡くなり、その反動からか本人は一生廓で過ごすことを決意し始める。綾麻呂は、共に自殺しようとしていた頼み人の夜鷹と一晩限りの情を通じ合わせたことで一緒に暮らそうと決意。裏稼業から足を洗おうとするが、お互いの名前を知らないまま悪人によって引き裂かれてしまう。お銀は潜り込んでいた上州屋で平手造酒と出会い、お互い何となくの恋に落ちる。しかし、道場を破門され江戸を出て行く平手に、お銀は一言「縁が無かったかな……」。一緒に酒を飲んだ お銀と平手の大人の恋愛も一晩限りに終わった。

毎回殺しを監視していた仁十郎だが、今回遂に秀に目撃されてしまう。秀に追われた仁十郎を助けたのは宗右衛門。その繋がりを確信した秀は、これまで心当たりが無いと言い張ってきた宗右衛門に対しての不信感に繋がり、何もかもが信じられてない疑心暗鬼の状態へと陥っていく。若紫への想いも含め、この物語の決着はどうなるのか?

史実人物

平手造酒。この時26〜7歳。天保水滸伝の立役者として語り継がれる北辰一刀流の使い手。しかし、北辰一刀流を破門となり消息は消えた。彼が再び表舞台に登場するのは、これより11年後。大利根河原の決闘で、遂には自らも敵の刃に果てたのである。