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日本の片隅でひっそりと暮らすおじさんが書くブログ

必殺からくり人富嶽百景殺し旅 第9話「深川万年橋下」

脚本:武末勝 監督:松野宏軌 ゲスト:岡崎二朗 横森久 井原千寿子

旗本くずれの雷党とヤクザ衆辰巳一家の縄張り争い。雷党の首領・本間左近(岡崎二朗)と親分・大五郎(木村元)は互いの陣営から人質を交換して牽制するが、大五郎の息子が左近に斬られてその首が深川万年橋橋脚下に流れ着いたことからますます険悪なムードに。しかし、その影には「人質賄」と称する人質斡旋業を営む連中がいた。改易となった風間家の残党たちが暮らす長屋のリーダーである元家老・堀田忠典(横森久)は町名主の徳兵ヱ(成瀬昌彦)と組んで人質賄を行いその上辺を掠め取り直参旗本の株を買おうと画策。御家再興の考えなど毛頭無く、家臣の忠義心を利用しての悪どい金儲けを行う。

人質賄によって自分の息子を生贄とされ、あまつさえ殺されてしまったおたき(井原千寿子)は堀田に疑惑の目を向け芸者をしながら殺害された本当の理由を調べる。お艶(山田五十鈴)の協力も断っていたが、真相が発覚し夫が堀田に殺されてからはお艶に全てを話し子供の恨みを晴らして欲しいと口にする。左近と大五郎がまたも人質交換に。この人質はもちろん、堀田が家臣から差し出させたもので、その中には疑惑を抱くおたきの姿も。どうらやこれには左近も一枚噛んでいる様子。そこへ現れる唐十郎沖雅也)。悪事のからくりを暴いた事で大混戦となるが、その隙を狙って堀田、徳兵ヱ、左近、大五郎を始末するからくり人たち。

岡崎二朗、横森久、成瀬昌彦と強烈に渋い面々がゲストとして登場。「旗本奴と町奴」、水野十郎左衛門と幡随院長兵衛の対立を彷彿とさせる喧嘩が深川界隈で勃発し、その対立に便乗して金儲けを企むワルの一味をからくり人が始末する。両陣営が人質交換で牽制しあうわけだが、まったく牽制になっていないのは、実は人質がアカの他人だからなのだろう。左近は「大五郎の息子」という名目で預かったお滝の息子を斬り捨て万年橋橋脚下に首を晒したわけだが、この「人質賄」は殺された場合遺族の家臣に対し更に高いお金が支払われる。しかし、そのお金のうち7割近くを「御家再興のため」堀田に差し戻す仕組みとなっており、自動的に堀田が肥え太るシステムとなっているわけだ。恐らく、喧嘩の調停役である町名主の徳兵ヱが両陣営に持ちかけ仕事を斡旋していたのであろう。このシステム自体に異を唱えるおたきは「働けば良いのです」と当たり前のことを諭すが、武家の商法で事業に失敗してきた住人にその想いは届かず。

お艶たちももう闇の住人として必要以上に人目を避けるわけでもなく、殺し屋であることを仄めかしながら堂々と依頼人や悪事の被害者と立ち会っている。今回も始末をつけた後におたきと言葉を交わすなど、暗殺者というよりも正義の味方的な描かれ方がされている。からくり人シリーズってもともとこういうスタンスだし、それはそれで清清しいものを感じるわけだが。殺しのシーンでは、雷党と辰巳一家の大喧嘩の最中に、両陣営のトップを始末する唐十郎の殺陣が気持ち良い。また、お艶が吹き矢を使うシーンもあり、手の内の豊かさを披露している。

「深川万年橋下」

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橋の右側(深川寄)の橋脚下、水面に面している部分が赤く浮かび上がる。お滝の息子の首が、ここに流れ着いた設定。唐十郎、鈴平、お滝の三人が小船でこの場所へ向かう際には、この絵そのものが背景に使われている。