脚本:武末勝 山浦弘靖 監督:原田雄一 ゲスト:中島葵 山本亘 穂高稔
江戸で十年の女中奉公を終えて尾張不二見原へと帰ってきたおりん(中島葵)だが、自分の村は無くなり村人も消えていた。当時を知る人たちに訪ね歩くもなぜか誰も口を開こうとせず、唐十郎(沖雅也)の協力で真相を知っている素振の村人に尋ねようとした時、村人は何者かに射殺されてしまった。お艶(山田五十鈴)はこれらの一件を、鈴平(江戸屋小猫)とうさぎ(真行寺君枝)が遭遇した、尾張藩士が農民を斬殺した一件と関連があるのでは、と睨む。
町名主を務める尾張屋(穂高稔)がお艶たちの一座に退去を通告してきた。うろちょろするお艶たちが邪魔なようだ。早速尾張屋を調べると、樽の中からご禁制の朝鮮人参を発見。消えた村人を使って栽培し売りさばいている模様。栽培地にはおりんの婚約者・清吉(山本亘)もおり、唐十郎によっておりんは清吉と再会を果たす。清吉がおりんに向けて投げかける言葉は冷たいが、おりんが貯めた50両を見た途端態度は急変し、一緒に駆け落ちすることを約束。しかし、金の亡者に成り果てた清吉は尾張屋の手下となっており、おりんを殺し50両を持ち逃げする。一途な愛を踏みにじった醜い金の亡者を討つため、からくり人たちは尾張屋へと乗り込む。
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十年間、愛する人と故郷への変わらぬ想いを胸に江戸で体を売る商売に耐えてきた女が、十年間で何もかも変わってしまった人と故郷に裏切られ命を落としていく過程は哀切に満ち溢れている。自殺を試みたり、酒を煽るなど自暴自棄の極みへと上り詰めていくが、婚約者・清吉と再会することで今後の人生に賭けての逃亡に踏み切る。しかし清吉は、長い年月の間に「この世の全ては金次第」と人の心を失った外道と化しており、何の躊躇もなくおりんを殺害。その愛憎劇の凄惨さは、お艶がたまらず依頼人である永寿堂へ手紙を書いてしまうほど。
線香花火を使った演出で尾張屋へ乗り込むお艶。お艶の影が揺らめきながら大きく小さくを繰り返す演出は悪人たちの恐怖心を煽る意味では非常に効果的。清吉を仕留める際の唐十郎。おりんから奪った50両を取り出し「返すから助けてくれ」と醜く命乞いをする清吉を、表情一つ変えずに始末。消えた村の事を何も言わずに黙々と生きる老人たちや職人たちを見た唐十郎「結局、流されて生きるのが利口なんですかね……?」