大井川を越え金谷宿へと差し掛かる狂四郎(片岡孝夫)は突然狂乱した姫に襲われる。名は貴世(山内絵美子)と言い、阿波藩の姫君であった。阿波藩は西国十三藩の一つ。都田水心(岸部シロー)は阿波藩家老・勝俣雅楽(早川雄三)に打倒狂四郎を促すも、勝俣は貴世姫と将軍家との縁組を成功させ、阿波藩磐石の礎を築くことの方に心が傾いていた。
その貴世姫、夜毎旅の男を連れ込んでの遊興三昧。色事に狂い、用済みになったら殺してしまう「千姫もどき」として恐れられていた。とうとう金八(火野正平)も餌食となるも、狂四郎は貴世の心の闇を見抜いていた。貴世姫は将軍家との縁組が嫌で、道中狂態を演じてきたのだが、遂には心の中の魔性が本当に目覚めてしまい快楽を止めることができなくなってしまったのだ。狂四郎をも毒牙にかけんとする貴世姫に対し、狂四郎は貴世姫の顔を傷つけてしまう。
狂四郎が顔を傷つけた本当の理由は、貴世が罪もない男たちを殺してきたことへの業を背負わせるためと、将軍家との縁組を行わず国許へと帰れるようにとの配慮であった。結果的に阿波藩を救おうとした行為を逆恨みした貴世姫は、狂四郎に刃を向ける。しかし、その場に現れた殺し屋集団との戦いに巻き込まれ勝俣が死亡。常に自分の影となり傍にいてくれた勝俣の死で、全ての希望を失った貴世姫も自ら命を絶つのであった。
男をくわえ込んでは殺す血も涙もない諸行は、将軍家との縁組を嫌がる貴世姫の心の闇が原因であった。ところが、本当に魔性が目覚め、性と殺人両方の快楽が中毒になってしまった。狂四郎に対してまで、「平伏してわらわの僕となるのじゃ」などと言い出す始末。大きく吊り上がった猫目が魅力の、超ドS的な山内絵美子のルックスと相まって、お姫様と言うよりもまるで「女王様」といった感じ。金八はこの快楽を享受して、姫や従者たちと一緒に3P4Pやりまくりだったのに。にしても、今回は火野正平のアドリブが凄かったなあ……。話の中身が中身だけに、嬉々として演技に打ち込んでいる。
姫の狂態により阿波藩の評判を貶めることに頭を悩ます家老・勝俣。狂四郎は西国十三藩共通の敵ではあるが、狂四郎の荒療治こそ、阿波藩を救うためのものであることに気付き感謝の意を述べる。ところが、勝俣の想いを他所に狂四郎に刃を向ける貴世姫。自分を庇った勝俣の死によって、自分を支え続けてくれた人間の想いをようやく知った貴世姫であったが、全てに絶望した今、「一人で生きていく」ことは出来ず自らも喉を突いて命を絶つ。その場に居合わせながらも、あえて止めなかった狂四郎であった。
薩摩に雇われる殺し屋集団の元締は山本昌平。旅籠の主にしては人相が悪すぎる。怖い。
キャスト
眠狂四郎:片岡孝夫/金八:火野正平/都田水心:岸部シロー/島本半三郎:関根大学/森田周之助:鶴田耕裕/松浦与一郎:片岡松之助
貴世姫:山内絵美子/勝俣雅楽:早川雄三/蔵三:山本昌平/松吉:水上保広/小笛:高野洋子/早苗:白礼花/酒井:伊藤克美/人足:森下鉄朗、荻原郁三/侍:長坂保
お蘭:松尾嘉代
スタッフ
企画 | 神山安平(テレビ東京)/大塚貞夫(歌舞伎座テレビ) |
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プロデューサー | 犬飼佳春(テレビ東京)/小久保章一郎、沢克純(歌舞伎座テレビ) |
原作 | 柴田錬三郎「眠狂四郎孤剣五十三次」より(新潮文庫版) |
脚本 | 和久田正明 |
音楽 | 岩代浩一 |
撮影 | 藤井哲矢 |
美術 | 太田誠一 |
制作主任 | 黒田満重 |
照明 | 南所登 |
録音 | 田原重鋼 |
調音 | 本田文人 |
編集 | 河合勝巳 |
装飾 | 玉井憲一 |
記録 | 川島庸子 |
装置 | 松野喜代春 |
進行 | 大志万宗久 |
助監督 | 木下芳幸 |
殺陣 | 楠本栄一 |
特技 | 宍戸大全 |
ロケ協力 | 大覚寺 |
装置 | 新映美術工芸 |
床山・結髪 | 八木かつら |
衣装 | 松竹衣装 |
小道具 | 高津商会 |
現像 | 東洋現像所 |
ナレーター | 佐藤慶 |
制作協力 | 京都映画株式会社 |
プロデューサー | 佐々木康之 |
監督 | 家喜俊彦 |
製作 | テレビ東京/歌舞伎座テレビ |