袋井宿にて福知山藩藩主・朽木(坂田徹郎)より西国十三藩の密約書を強奪した狂四郎(片岡孝夫)は、福知山藩の追っ手である雷神党なる忍に狙われることとなる。一方、お蘭(松尾嘉代)と金八(火野正平)も狂四郎を追って旅を続ける。金八は土地の賭場でヤクザに追われているところを浪人・片倉新九郎(森次晃嗣)に助けられるが、片倉はお蘭の昔の許婚であった。
片倉は元・勘定方の列記とした侍であったが、上役の不正を糾弾しそのまま逐電。浪々の身となっていた。無念流の使い手でもある彼は、福知山藩の鮫島(千波丈太郎)に雇われ狂四郎を狙う刺客となっていた。お蘭と交わした「花弁事」をいまだに想う新九郎ではあるが、狂四郎に傾く心と、再び沸き起こる新九郎への情に葛藤し別れを告げるお蘭。
雷神党が狂四郎を始末するために動き出す。新九郎も同行するが、そこに現れたのはお蘭。新九郎を誘い出す。「娘の頃、花嫁になることばかり考えていた。あなたに、どうしたら気に入られるか、って。男と女がこんな風に出会うなんて……やっぱり、会わないほうが良かった……」お欄は取り出した小太刀で新九郎を突き刺す!「良いんだ……これで良いんだよ……」お蘭の愛憎を受け入れながら新九郎は死んでいった。
雷神党と鮫島を始末した狂四郎。これ以上旅を続けず江戸へ戻ることを決めたお蘭と「花弁事」を交わす優しさを見せるのだった。
お蘭主役編&降板編。「花弁事」というおまじないを縦糸にドロドロの愛憎劇が展開される。なお「花弁事」とは、互いが交わす杯に花弁を浮かべて飲めば、互いの縁が濃くなるというもの。
偶然再会したお蘭と新九郎。不正を見逃せない気性から、勝ち組エリートであった身分とお蘭との婚約を捨て浪々の身に。糾弾した上役が処罰されたことに安堵し、お蘭への情を再び燃え上がらせる。しかしお蘭の心は狂四郎へと傾いており、狂四郎を自分が倒すべき相手だと知った新九郎は狂四郎を倒しお蘭と再びよりを戻す決意を固める。狂四郎に宣戦布告をする場面で漏らすお蘭の「嫌……(勝ち負け)どっちも嫌……」の言葉が切ない。
「自分を連れて逃げてくれても良い」新九郎への情を再燃させたのか、それとも狂四郎と新九郎の対決を見たくない女の性か、ともあれ彼が薩摩の刺客として現れた以上、狂四郎に知らせなければならない。苦しい心の内のお蘭に狂四郎は「無理をするな。お前は、自分の生きたいように生きれば良い」と諭す。新九郎を誘き出すお蘭。過去を振り返りながら、そして、その過去を断ち切るかのごとく小太刀を新九郎に突き刺していく。お蘭と新九郎がかつて交わした「花弁事」により再会した縁を、自ら断ち切る辛さが滲み出る。
スタッフ
企画 | 神山安平(テレビ東京)/大塚貞夫(歌舞伎座テレビ) |
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プロデューサー | 犬飼佳春(テレビ東京)/小久保章一郎、沢克純(歌舞伎座テレビ) |
原作 | 柴田錬三郎「眠狂四郎孤剣五十三次」より(新潮文庫版) |
脚本 | 和久田正明 |
音楽 | 岩代浩一 |
撮影 | 中村富哉 |
美術 | 太田誠一 |
制作主任 | 黒田満重 |
照明 | 南所登 |
録音 | 田原重鋼 |
調音 | 本田文人 |
編集 | 河合勝巳 |
装飾 | 玉井憲一 |
記録 | 川島庸子 |
装置 | 松野喜代春 |
進行 | 大志万宗久 |
助監督 | 木下芳幸 |
殺陣 | 楠本栄一 |
特技 | 宍戸大全 |
ロケ協力 | 大覚寺 |
装置 | 新映美術工芸 |
床山・結髪 | 八木かつら |
衣装 | 松竹衣装 |
小道具 | 高津商会 |
現像 | 東洋現像所 |
ナレーター | 佐藤慶 |
制作協力 | 京都映画株式会社 |
プロデューサー | 佐々木康之 |
監督 | 皆元洋之助 |
製作 | テレビ東京/歌舞伎座テレビ |