捨て猫が原因で些細な喧嘩をした海坊主と美樹。そんな美樹に左門寺コンツェルンの跡取り・伊太郎が目を付けたからさあ大変。女心をまるで分かろうとしない海坊主に香の言葉は届くのか?
海坊主、アジトで美樹の写真を見つめるシーン「MIDNIGHT RAIN(歌:ANIMA)」。『シティーハンター』11話で初登場し、『シティーハンター2』44話で“冴羽の心を盗むため”に「喫茶キャッツ・アイ」でアルバイトを始めた麻生かすみが登場する。
キャッツ・アイの裏で捨てられていた猫を拾った美樹とかすみだったが、もちろん海坊主は大反対。些細な口論から飛び出した美樹がそのまま依頼人との交渉に向かう。依頼人は日本有数の名家である左門寺家の一人息子・伊太郎。ちょっと病弱そうで顔色が悪い。依頼内容が不明瞭のまま左門寺家へと連行される美樹だったが、依頼なんてものは最初から無く、左門寺家当主・春子が美樹と伊太郎をくっ付けるために拉致したに過ぎなかった。
一方、海坊主は「美樹がまともな世界で幸せになれれば」と考えていたが、その考えを香に否定される。香は美樹の「女心」を海坊主に訴え、更に自分も冴羽が鈍感なことに苛立ちを覚えている心情を思わず吐露。冴羽は不純な動機(と言っても、それは海坊主を促すための嘘なのだが)で美樹を助けに向かい、海坊主も「美樹が本当に幸せかどうか確かめる」という“建前”で左門寺家へ向かう。途中、左門寺が用意したハーレムのトラップにも動じず、美樹だけを想い続けた海坊主。その姿に、美樹は改めて海坊主に惚れ直したのでした。一方、冴羽はというと、ハーレムから一歩も動かず、左門寺一家から「お願いですから帰ってください」とまで言われる始末……。これには香も呆れ顔。
どこかで見たストーリーだな……と思ったら、『ルパン三世PARTIII』14話「誘拐ゲームはお好き」のシティーハンター版。どちらも脚本は平野靖士である。左門寺春子をアルダ婆さん、伊太郎をロンと例えていただいたら結構か。もちろん美樹を峰不二子に例えての作劇だが、ルパンたちは催眠術のトリックを使って不二子を取り返したのに対し、冴羽と海坊主はバズーカと拳銃片手に正面突破!これには「海坊主と美樹の想いの再確認」という縦糸があったので、こういったストレートな描写のほうが分かりやすいという面もあったと思うのだが。ちなみに、密室に伊太郎と美樹を閉じ込め、二人っきりのところをモニターで監視する春子の行動もアルダ婆さんそのままである。セリフや描写に至る部分については、ルパン三世のそれよりかなりマイルドではあるが。
マザコンの伊太郎役には辻谷耕史、春子役には『演歌の花道』のナレーションでおなじみの大御所・来宮良子と、超豪華なゲスト。彼らの演技もさることながら、作画スタッフにも目を向けていただきたい。原画には神村幸子とこだま兼嗣が参加し、その他の面々も強烈。動画には中谷誠一の名前もある。今回は戦闘の迫力よりもキャラクターの心情に割くカットが多かったため、特に香と美樹の表情にかなり力を入れていたように思われる。作画オタ必見の回とも言える。
セリフ
海坊主「これで良い……これであいつも、普通の女として幸せな生活を送れる…。パートナーとして俺みたいな男の傍にくっ付いて、血なまぐさい危険な世界にいることもない」
冴羽「保護者としての役割は終わった、ってか。前にもこんなシーンあったよな……根暗なヤツ。都合悪くなるとすぐ自分の世界に閉じこもる。……へえ、お前サングラスの替え持ってたんだ。でも、美樹ちゃんの替えは無いぜ」
香「今度だけは海坊主さん間違ってる!美樹さんはリョウともっこりを賭けてまで、海坊主さんと一緒になろうとした人よ。そんな人が、お金なんかで他の人になびくと思う!?海坊主さん、そんな風に美樹さんを見てたの?そんなに美樹さんを信じられないの?情けないわ、軽蔑しちゃう!……まったく、女心を分かっちゃいないんだから。女ってね、時には男の人の愛を確かめてみたいのよ。私なんか、いつも鈍感相手に苦労してるんだから……。」*海坊主の「え?」に顔を赤らめる香
美樹「ま、ファルコンが私のことをどれくらい想っててくれるか、良いチャンスかもね。私って悪い女♪」
冴羽「(左門寺が仕掛けたハーレムにて)そうみんなアルバイト!名前は?電話番号教えて?ボクちゃん冴羽リョウ、二十歳なんだよ?」*お前は高田純次か
美樹「何やってたの!?遅いじゃない!こんなところ一人でも逃げられたけど、待ってたのよ!?……許してあげる。ガラスを割ろうとした時の真剣なファルコンの顔、カッコよかった……」
次回予告
香「ジャン・ルイ・セロー博士って知ってる?海底の記録映画で有名な」
冴羽「綾乃ちゃんってその調査船に乗り込んでいるのか……」
香「それが最近船が荒らされるんですって」
冴羽「あんなおじさんとじゃ危ないよな、絶対」
香「二人っきりだもんね」
冴羽「よぉーし、大船に乗ったつもりでまっかせない!」
香「大船?海賊船じゃないの?」
冴羽「シティーハンター3『恋はダイビング!美女が水着に着替えたら』」
香「見ないと沈んじゃうぞ?」
キャスト
冴羽獠:神谷明/槇村香:伊倉一恵/海坊主:玄田哲章/美樹:小山茉美
左門寺:辻谷耕史/春子:来宮良子/かすみ:冨永みーな/警備員A:山崎たくみ/警備員B:中博史/警備員C:石井浩司*1/大男:茶風林/女の子:麻見順子/美女たち:林玉緒、斉藤千恵子、前田雅恵*2
スタッフ
構成 | 平野靖士 |
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絵コンテ | こだま兼嗣 |
演出 | 山口美浩 |
作画監督 | 神村幸子 |
原画 | 神村幸子/児玉兼嗣*3/杉野左秩子/山内貴美子/稲野義信/川元利浩/高橋久美子/杉浦幸次 |
動画 | 高橋良行/赤坂理恵子/中谷誠一/小田真弓/スタジオ・ムー/スタジオ天/スタジオたくらんけ |
動画チェック | 石井康雄 |
色指定 | 大橋奈緒美 |
仕上 | エムアイ/井口尚子/三浦悦子/佐藤ひろ子/佐藤美代子/今井いつ子 |
特効 | 千場豊(マリックス) |
美術 | 本田修 |
背景 | 獏プロダクション/中原英統/前田由紀子/金子則子/前美智子/矢島伊都子 |
撮影 | (株)旭プロダクション/長谷川洋一/大神洋一/薮田順二/土岐浩司 |
編集 | 鶴渕映画 |
タイトル | マキ・プロ |
効果 | フィズサウンドクリエイション 松田昭彦 |
録音スタジオ | APUスタジオ |
整音 | 柴田信弘 |
音響制作 | オーディオ・プランニング・ユー |
現像 | 東京現像所 |
メカニカルデザイン | 小原渉平 |
文芸設定 | 稲荷昭彦 |
制作助手 | 外池葉子 |
色彩設計 | 中山しほ子 |
仕上助手 | 新垣純子 |
製作担当 | 望月真人 |
制作デスク | 池部茂 |
制作進行 | 松村圭一 |