名将・マゼラン提督の頭脳を搭載した超巨大戦艦・マゼランが突如暴走を開始。破嵐万丈とコマンダー・カトロフはマゼラン撃破という共通の目的を抱き、それぞれ戦いに赴く。
「バカボンパパ」雨森雅司をゲストに迎えた今回のお話は、機械と同化された人間の暴走を描いたもの。この作品における「機械と人間の融合」とはメガノイドを指すわけだが、メガノイドとも人間とも違う位置を設けることで、万丈たち人間とメガノイドを浮き彫りにした作品と言える。
マゼラン提督は旧式の洋上艦隊を指揮しメガノイドと交戦。デスバトル13隻を沈めた名将だったが、病魔には勝てず病没した。しかし、その功績や能力を惜しんだ軍部が、マゼラン提督の頭脳パターンをメインコンピューターにコピーし、マゼラン提督の判断力とコンピューターの正確さを兼ね備えた戦艦・マゼラン号を作り上げた。主砲である重力波粒砲は島ひとつはおろかデスバトルすら一撃で消し去るほどの威力。まさに世界最強の戦艦であり、人間たちにとっては対メガノイドの主力艦となるべきものであった。
この「人間と同化した最強の兵器」を“メガノイドの究極の姿”と位置付けたドン・ザウサーは、マゼラン強奪をコマンダー・カトロフに命じる。ところが、コマンダー・カトロフに向けマゼラン自らがコンタクトを取ってきた。マゼランは機械と融合したことで、それまで撃破してきたメガノイドに興味を抱き、カトロフたちをマゼラン内部へと招待・幽閉。人間である万丈もろとも人体実験をしようというのだ。自らが世界を征服するため、人間とメガノイド双方に降伏を命じるマゼラン。もちろん両者ともこれを拒否。レイカのおかげで幽閉されていた部屋の装甲が剥がれ落ちたため、万丈、メガノイド双方は脱出することに。カトロフは万丈に「借りは返す」と伝えデスバトルへと戻っていく。
万丈はダイターン3を呼び出し、またカトロフはメガボーグ化してそれぞれマゼランに立ち向かう。マゼランを破壊するようコロスより命令を受ける際、カトロフがコロスに向けて言い放つ言葉が非常にカッコいい。
マゼランの武装は非常に強力で、ダイターンもハンマーを粉砕されてしまう。更には、首都であるブライシティに向かい盾にせんとする作戦を取るマゼラン。デスバトルを一撃で葬った重力波粒砲に脅威を感じた万丈は、レイカの乗るマッハアタッカーを回収しようとするが、その一瞬の隙を突いてマゼランの重力波粒砲がダイターンを狙う!発射された重力波粒砲からダイターン3を庇ったのは、なんとカトロフだった!胴体は破壊されたが、首から上だけが生き残るという驚きの性能に、万丈も思わず「メガボーグにあんな性能があったとは…」と舌を巻く。でも、5話のコマンダー・ブランネルも同じような機能を持っていたはずだけど。とにかく、この時のカトロフが言う「借りは返したぞ!」のセリフもこれまたカッコいい。意外と義理堅い性格。
サン・アタックの発射口を破壊された万丈は、カトロフとマゼランが激戦を繰り広げる中、マゼラン内部へと生身のまま潜入。そこで、頭脳カプセルがある中枢部・記憶パネルルームへとたどり着く。マゼランは脳と記憶回路のみで戦艦を動かしているだけに過ぎない。しかし、自らは神であるとさえ豪語し牙をむく。マゼランはあくまで機械であることに変わりはない。万丈は、マゼランが口にする「私は神に近い存在だ」という言葉に最後まで耳を貸さず、記憶パネルを破壊し尽くすのだった。また、カトロフもマゼランに強い憎しみを抱きながら特攻。自らの命と引き換えではあったが、ダイターン3でさえほとんど歯が立たなかったマゼランを、ほぼたった一人の力で撃沈せしめたのだった。
コマンダー・カトロフの戦闘能力、機能、そして性格については万丈も一目置いているようであり、レイカも思わず「戦わなくて良かったわね」と口にするほど。確かに、重力波粒砲を胴体に喰らっても首から上は生き残るし、更に首から上だけでマゼランのような強力な相手を沈めてしまうのだから、その力は非常に高いものだったと思われる。また、カトロフは「メガノイド」という価値観についても独自のプライドを抱いているようで、恐らくコロスが持つ「メガノイド」に対するアイデンティティとは、明らかに一線を画す考え方を持っているように思われる*1。
マゼランは死の間際に「万丈も、メガノイドも、なぜ私の力を拒む?」と叫んだけれども、万丈にしてみればマゼランはメガノイドと同等、いや、それ以下という見方をしていただろうし(脳と記憶パネルだけで力を得た分際で、自らに対し全てを超越した“神”とまで豪語するマゼランを、最終的に万丈はメガノイド以上の憎悪をもって破壊している)、メガノイドというかここではカトロフであるが、カトロフもきっと同じ気持ちであったに違いない。機械と兵器と記憶パターンだけで作られたものが、人間を越えた「スーパー人間」であるメガノイドの究極形態であるわけがない……カトロフは最初からそう思っていたのだろう。だからこそ、カトロフは特攻の際に「こんなもの、地獄へ堕ちろ!」と非常に強い憎悪を抱きながら撃破に至っている。
私は今回の話は、コマンダー・カトロフの存在が非常に大きかったと思っている。カトロフもまた非常に人間くさく、またメガノイドとしての正しい理想と、高いプライドを抱いた存在であったのだ。だからこそ、万丈よりもマゼランに対する憎悪が上回り、攻撃を加え続けたのだと思う。万丈は自ら生身の人間であることに高いプライドを抱き、「メガノイドは人間以下だ」という信念でメガノイドと戦い続けている*2。カトロフもまた、自らが「人間を越えたスーパー人間」としての強いプライドを抱いていたとは思うが、そこには、根底に流れる「人間」という共通の部分があり、マゼランのような単なる“兵器”が「人間」や「スーパー人間」を越えた“神”を名乗る傲慢さを、そして自分たちの首領であるコロスやドン・ザウサーがこの兵器を「メガノイドの究極形態」と言ってしまったことを許せなかったのだろう。両者にしてみれば、マゼランはまさに万丈が言う「こんなもの」であり俗物の極みであったのだ。
セリフ
コロス「マゼランこそ、我らメガノイドの究極の姿です」
マゼラン「私はメカと合体させられたのだよ。メガノイドと接触したいと考えるのは当たり前と思うが?……メガノイドがスーパー人間なら、私は神だ…神!ふはははは」
万丈「カトロフ、こんなものが神で、メガノイドが目指すものがこんなものとはな」
カトロフ「マゼランが、我らメガノイドの求める理想の姿なのでありましょうか?(コロスの「そうです」に対して)ならば、あのようなものにはなりたくありません。この私の手で葬り去るまでです」*カトロフは今回のドン・ザウサーとコロスの考えを聞いたことで、メガノイドというものに対し強い失望感を抱いたのかもしれない。
万丈「ここを破壊されれば、脳だけのお前は死ぬわけだな」
マゼラン「ま、待て万丈、私は……」
万丈「黙るんだマゼラン!このパネルと繋がっていればこそ、船を動かせたんだ!それを忘れて!」
マゼラン「い、いや、忘れていたわけではない」
万丈「例え脳が生きていても、これでは機械なのだよ」
マゼラン「私は、マゼランだ!」
万丈「所詮、機械は機械!」
スタッフ
脚本 | 松崎健一 |
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絵コンテ | 斧谷稔*4 |
演出 | 小鹿英吉 |
作画監督/原画 | 加藤茂 |
作画 | 小林大介/松島明子/小林智 |
美術 | メカマン |
背景 | アート・テイク・ワン |
動画チェック | 柏田智子 |
仕上 | ディーン*5/宮川はれみ/森下節子 |
特殊効果 | 土井通明 |
タイトル | 多々良正春 |
撮影 | 旭プロダクション |
編集 | 鶴渕友彰/小谷地文雄 |
現像 | 東京現像所 |
音響監督 | 松浦典良 |
効果 | 松田昭彦 |
整音 | オーディオ・プランニングU |
録音 | 整音スタジオ |
制作進行 | 望月真人 |
設定制作 | 鶴見和一 |
アシスタントプロデューサー | 神田豊 |
制作 | 名古屋テレビ*6/創通エージェンシー/日本サンライズ*7 |
次回予告
コマンダー・ミレーヌ。小指ほどのメカが、ヘッドバンドを使って人間を操るだと?トッポを召使いに、ビューティ、レイカをも使うとはな!許さん!次回、無敵鋼人ダイターン3「僕は僕,君はミレーヌ」に、カムヒア!