多分、こういう事件が起こってくるんじゃないかと思っていたんですよ。
5月1日の朝の情報番組で「現金10万円給付をいち早く実施!」という自治体(青森県西目屋村)が取材を受けていたけど、こういうのを見た人の中には「ひょっとして、うちの市町でも給付が始まっているのかしら?」「5月に入っているのに申請書が届いていないじゃないか!」と、まるで他の市町で起こっていることを全国的なことだと勘違いしてしまう人がいるのではないかと、個人的に思っていました。やっぱり出てしまったか…。
先ほどの青森県西目屋村が、4月30日に給付を始めたという報道を見て、同県内の青森市の市役所に苦情が入ったというニュース。自治体それぞれの事情や母体数である人口の違いといったことすら理解できていない人が、「同じ青森県の西目屋村が給付を始めた」ということだけで脊髄反射をして、「西目屋村が給付を始めたのに、青森市は何をやっているんだ」と喚く。まるで、「あいつはできているのに、どうしてお前はできないんだ?同じ人間だろ!?」という知性の欠片もないパワハラ上司のようなクレームには呆れかえるが、お金が絡んでいる以上、こういう勘違いというか必死な人が増えてしまうというのは、ある意味仕方がないのかもしれない。
ちなみに、名古屋市も青森市も、ホームページ上で特別定額給付金についての情報を公開済である。
青森市はちょっと分かりづらかったな。会議資料みたいな形で公開されていたし。
ただまあ、特別定額給付金について関心がある人は、自分が住む市のホームページを確認すれば何らかの情報を得ることができる。そこに載っている情報が確かなのだから、「なるほど」と安心することもできる。わざわざ市役所へ乗り込んでいく必要もない。
でも、こうしたリアルタイムに変化する情報源へアクセスできない人、アクセスできるツールを持っているけど使いこなせない人、といったいわゆる「情報弱者」の人たちにとっては、「ホームページでご確認ください」が通用しない。市から届く月2回程度の広報誌くらいでしか確認ができないのだ。僕の母もスマホは持っているものの、使いこなせているとは言えず、市のホームページなんて見ることさえできない。だから、母が住む市のホームページを僕が見て、SMSで母に情報を送るというやり方で、正しい情報を伝えている。
市が実施するものの中で、全戸を対象とした配布物や申込みが必要なものに関しては、広報誌の配布のタイミングに合わせて行うことが多い。僕が住む市が実施する特別定額給付金は、5月11日に申請書郵送開始、5月13日から随時給付開始といったスケジュールだが、これも恐らくは中旬頃に配布される市の広報誌に合わせたスケジュールなのだと思う。中旬頃の広報に特別定額給付金についての情報を入れ込み、ホームページを見れない人や、障がいを抱えている人などを含めた全戸周知を図る考え方なのだろう。
ホームページを見ることができない人でも、アナログな広報誌という手段で各戸へ情報が行き渡るので、市民の側としても「知らなかった」とは言いづらい。例えクレームを言われたとしても、市役所側としては「ここまでやってますよ」と言うことができる。もっと言えば、「ここまでやっているのに、見ていないあなたのほうが悪いのでは?」という話にも持っていける。市側としても、余計なことを言われた際の防衛策になりますわな。
ただ、新型コロナウイルスに関する情報は刻一刻と変化していくわけで、例えば「県内のどの地域に新たな感染者が発生した」という情報は、その都度情報を確認していかないといけないし、予防に関する情報や相談窓口といったものだって次々と変化していく。市民の側としても、自分たちから情報を取りに行く必要があるため、「待つだけ」の情報収集では有益な情報が得られない部分があり、公共の側としても「ホームページで公開してありますから」だけでは済まない部分もあるだろう。
これは「公共と市民」というだけではなく、「企業と消費者」という関係でも言えることだけど、今回の新型コロナウイルスや特別定額給付金に関する一連の情報を通じて、「情報発信のあり方」と、情報を受け取る側の中で「情報を受け取れる人」と「受け取れない人」の格差がより顕著になっていることを強く感じた。また、「情報を受け取れる人」の中にも「情報を正しく理解できる人」と「情報を間違って理解してしまう人」がいたり、「受け取った情報を正しく第三者に伝えられる人」と「受け取った情報を間違って理解したまま第三者に伝えてしまう人」なんかもいて、こうした課題を今後一体どうクリアにしていくのかな、という疑問も感じた。情報から取り残されていく人、デマを信じこんじゃう人、情報の取捨選択ができない人、どんどん出てくるんだろうなあ。
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