交通事故から奇跡のカムバックを果たし、ミドル級タイトルマッチに挑むプロボクサー・荻野俊一だったが、トレーニング中に何者かに射殺される。荻野が死んだことで、同ランクの稲垣がミドル級タイトルマッチへの挑戦権を得ることになったが、荻野を射殺した犯人は、誰でもない稲垣だった。荻野の恋人だった女医・岩崎めぐみから稲垣殺しを依頼された冴羽。交通事故の後遺症で苦しむ萩野の懸命なリハビリを支えてきためぐみだったが、その交通事故も稲垣が引き起こしたものだったのだ。めぐみは末期癌に侵されており余命幾何も無く、痛みや苦しみを酒で紛らわせる毎日を送る。稲垣の始末料はめぐみ自身の死亡保険金であった。
稲垣はチャンピオン・三田にまで魔手を伸ばす。三田の娘を誘拐し、娘の命と引き換えにチャンピオンの座を譲れと脅迫。冴羽の怒りは頂点に達する。三田と稲垣のタイトルマッチが開催される。勝利が確約されている稲垣は3ラウンドでチャンピオンを倒すとリング上で豪語するなどやりたい放題。しかし、その姿を冴羽はしっかりと捉えていた。一瞬の隙を突いてこめかみに銃弾を撃ち込む冴羽。稲垣にリングアウトでの惨めな敗北と死を与える。稲垣の死を見届け、会場を後にするめぐみの前で、冴羽は受け取った死亡保険金の権利書を破り捨てる。「おたくの命がある限り、俺を恋人だと思ってくれ」
ストレートに「始末=人殺し」を依頼されるエピソード。殺される側である稲垣は相当な外道で「依頼人の動機」「殺す側」「殺される側」の説得力のバランスに崩れはない。とにかく稲垣の狂いっぷりは悪辣非道で腹立たしく、そのキャラクター像を存分に引き出す広瀬正志の好演が光る。依頼人・岩崎めぐみ役は上田みゆき。神谷明とは、神谷が主役を演じた『闘将ダイモス』のヒロイン・エリカ役で共演している。
さて、今回からは「いつものサブタイトルの曲」と「伝言板にXYZの文字」が初登場。これまで冴羽は自宅で槇村から口頭で依頼を受けてきたが、今回は伝言板に「XYZ」の文字が書かれていることを槇村が確認しに行くシーンが冒頭で挿入されている。また、次話で登場する槇村の妹・香の存在がこのエピソードで言及されている。めぐみの保険証券の一番下の欄には、本作のプロデューサーである「植田益朗」の名前が記載されているお遊びも。主題歌のタイトルがサブタイトルに起用されているというのも、この当時のアニメ独特の懐かしさを感じさせる。
冴羽自身も荻野を殺された事で賭けボクシングの被害10万円を被るというとばっちりを受けてはいるが、それ以上に稲垣の悪事に対しての怒りは相当なもので、稲垣を殺すためだけにしつらえた「純金製の銃弾」を作り上げ始末に挑む。めぐみを会場へと招待し、目の前で稲垣の不様な死を見届けさせることにより、カタルシスを感じさせる流れとなっている。
この作品はパイロット版として製作されており、こだま兼嗣が監督として起用される以前に作られたエピソードである。監修は高橋良輔が行っている。めぐみが冴羽の胸の中で泣くラストカットは秀逸。
原作
「栄光なきテンカウント!」
セリフ
槇村「可愛い妹を進んでお前の毒牙にかけようって兄貴がどこの世界にいるんだ」
冴羽「……狂ってやがるぜ……お前は」
冴羽「口径500、ニトロエクスプレス弾。100mの距離から放ったこの弾は2tもの物体を1フィート動かせる。しかも稲垣、これは貴様のためにしつらえた純金製フォローポイント弾だ。……こいつを貴様の耳にぶち込んでやる。純金の弾は貫通せずに、貴様の頭蓋骨にへばり付く。……稲垣、貴様に栄光は無い。惨めな死に様があるだけだ。神聖なリングの上では殺さない。貴様に相応しい死に場所は……」
次回予告
冴羽「何てこった!美女ばかりが次々と蒸発してるんだって。あー、勿体無い話。槇村の妹もいなくなったって言うけど、あいつの妹じゃどうせ……いくら相棒の依頼でも気が乗んないよなこの仕事。ところが、俺の前をウロチョロする胡散臭〜い奴、これが男かな〜って思ったら何とビックリもっこりバストちゃんでやんの。あ〜ははは、この感触、こうでなくっちゃ!面白くなってきたぜ〜。次回『美女蒸発!!ブティックは闇への誘い』お楽しみに!」
キャスト
冴羽獠:神谷明/槇村:田中秀幸
めぐみ:上田みゆき/稲垣:広瀬正志/三田:大塚芳忠/荻野:幹本雄之/アナウンサー:天地麦人*1/出前持ち、レフリー:塩屋浩三/看護婦:神代智恵*2/ギャル:斉藤ひろみ/観客A:坂東耕一郎*3/観客B:野口敏郎/観客C:大竹竜二
スタッフ
脚本 | 平野靖士 |
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絵コンテ | 滝沢敏文 |
演出 | 今西隆志 |
作画監督 | 北原健雄 |
原画 | 遠藤栄一/山内貴美子/奥田淳/生亀信幸/長谷川直/栗井重紀/大野勉/瀬沼靖治/横溝達男/木内良子 |
動画 | 島田悌三/四本忠司/アド・コスモ/スタジオムー/スタジオ天/スタジオMAY |
動画チェック | 石井康雄 |
色指定 | 井沢徹 |
仕上 | スタジオ・ボギー/平沼淳子/藤沢早子/工藤栄子/中根富士美 |
特効 | 千場豊(マリックス) |
背景 | 獏プロダクション/本田修/本田利恵/中原英統/平田秀一/平川栄二/西村康浩/もたい智恵子 |
撮影 | 旭プロダクション/長谷川洋一/末弘孝史/福田寛/土岐浩司 |
編集 | 鶴渕映画 |
タイトル | マキ・プロ |
効果 | 松田昭彦(フィズサウンド) |
整音 | 大城久典 |
音響制作 | オーディオ・プランニング・ユー |
録音スタジオ | A・P・Uスタジオ |
現像 | 東京現像所 |
設定 | 山本之文 |
制作助手 | 渡辺葉子/佐藤あさみ |
制作進行 | 藤本容伯 |
文芸 | 外池省二 |
製作担当 | 望月真人 |
本ページの情報は2020年2月時点のものです。
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