冴羽の元に届けられる冴子殉職の知らせ。しかしそれは、要人暗殺計画を察知した警視庁が、冴子を囮に殺し屋を逮捕するという危険な計画であった。殺し屋の名はマイケル・ガーラント。裏の世界で「世界No.1」と言われる殺し屋だ。
ガーラントから冴子をガードする冴羽を「本物のプロ」と見込み、ガーラントは冴羽に一対一の対決を申し込む。巧みなトラップと銃の技、そして日の出の時刻と方角までをも熟知したガーラントの戦いぶりに苦戦を強いられる冴羽だったが…。
冒頭の挿入曲「NEVER GO AWAY(歌:北代桃子)」。
世界有数の石油産出国・キルレア共和国の大統領が表敬訪問のため来日。その大統領を暗殺するために、国際的殺し屋が日本に来るという情報が入った。警視庁は大統領暗殺を阻止するため、大統領が日本に来る前に殺し屋と接触し“ある人物”の殺しを依頼する。そして、殺しの現場を押さえて殺し屋を逮捕する作戦に出た。その殺し屋のターゲットこそ、警視庁の女刑事・野上冴子であった。相手がマイケル・ガーラントと知った上で、冴羽は冴子護衛の依頼を引き受ける。
冴子を狙うガーラントを、一瞬の早撃ちで牽制する冴羽の腕前に「本物のプロ」のニオイを感じたガーラントは、かつての仲間でもある海坊主を介して正式な「勝負」を依頼する。トラップの名手でもあるガーラントは、決闘の場である廃ビルで入念にトラップの準備をするが、一方の冴羽は一人静かに星空を見上げたまま。
決闘が始まる。冴羽はガーラントのトラップを潜り抜けながら間合いを詰めるも、ガーラントも無線マイクで冴羽の気を逸らしトラップに追い込むなど抜け目が無い。冴羽が手榴弾のトラップに引っ掛かったことで起こった爆発に、思わず飛び出してしまう香。兄の時のように、身近な人間を知らないうちに失いたくないという想いの強さが、危険な決闘の場に足を走らせる。ガーラントは、冴羽を庇う香を撃てなかった。決戦の場所では朝日を背にするガーラント。昇る朝日に対して逆光の位置になるという致命的なミスを犯してしまう冴羽だが、思い切ってガーラントの頭上に飛び込んで行く。頭上から落ちてくるものを仕留めるのは射撃のプロでも難しい。そこを突いた作戦であった。一発でガーラントの心臓を撃ち抜かなかったのは、ガーラントが冴羽を庇う香を撃たなかったから。「プロの世代交代」を感じたガーラントは、そのまま殺し屋を引退し本国へと帰っていった。
『シティーハンター』シリーズでは強敵と対峙するエピソードがいくつかあるが、このエピソードはその中でも特に手ごわい相手との対決を描いている。原作からの抜粋ではないオリジナルエピソードでありながら、海坊主の過去に独自の肉付けをするなど作品に厚みを持たせている。雨、夕暮れ、夜、と作品内の生活時間帯の背景が暗く、またふざけたシーンが極力抑えられたハードな演出が手伝ってか、全体を通して非常に落ち着いた内容に仕上がっている。
マイケル・ガーラントの描写も、冒頭から「世界でNo.1の殺し屋」であると散々持ち上げているが、設定レベルではなくその実力をしっかりと描いており、評判倒れのキャラクターになっていないところにスタッフのこだわりと意識の高さが感じられる。戦闘シーン、「WANT YOUR LOVE(歌:北代桃子)」と「FOOTSTEPS(歌:北代桃子)」の挿入のタイミングが絶妙。なお、このガーラントとの一戦は、本作最終回(第51話)にも言及されることになる。
ゲスト
マイケル・ガーラント
国際的な殺し屋。ある一定レベル以上の実力を持つスイーパーからは「世界でNo.1の殺し屋」として知られており、世界的にも非常に高い知名度を持つ人物。
このエピソードではキルレア共和国大統領暗殺を依頼され来日したという設定。キルレア共和国は小さいながらも世界有数の産油国であり、大統領は諸外国よりVIP待遇でもてなされる人物だが、そんな世界の大物の暗殺依頼を受けるレベルの殺し屋である。
もちろん日本にもコネクションを持ち情報網を確立している。冴羽のプロフィールも都内にある子飼いの情報屋「odyssey」から得た。自分と同じ「プロのニオイ」を持つ相手を見つけたとき、暗殺依頼よりもまず決闘を優先させる傾向にあり、決闘の前には精神を落ち着かせるためかタキシードを着てピアノを弾く。
物心がついたときにはすでに銃を握っていたようで、このことから冴羽と同じ傭兵部隊出身もしくは戦争の世界で生き続けてきたことが予想される。なお、卑怯な手段は一切行わず、自らの実力を以って相手と対峙することからも分かるとおり正道の殺し屋であり、東京の繁華街ではチンピラに絡まれている儚い花売り娘を助けている。
冴羽との対決に敗れ世代交代を感じたガーラントは、日本での仕事を行う前に引退を決意。冴羽はこの事により、「マイケル・ガーラントを引退に追い込んだ男」として、計らずも世界的知名度を得ることとなる。
海坊主とガーラント
ガーラント「遅いな……。こいつが武器だったらユーは死んでる」
海坊主「昔の仲間を信用しただけさ」
ガーラント「仲間を信用し過ぎて死んでいったヤツは大勢いる」
海坊主「そいつらは信用する相手を間違えたのさ」
ガーラント「ふふ……久しぶりだな」
海坊主「あの時以来だ。突然の連絡でビックリした」
ガーラント「頼みがある。冴羽リョウを知っているか?」
海坊主「少しは」
ガーラント「グッドだ。こいつをミスター冴羽に渡して欲しい」
海坊主「……!赤い薔薇……冴羽と会ったのか?」
ガーラント「スコープを通してな」
海坊主「あんたのスコープに入ったのに、冴羽は生きているわけか」
ガーラント「彼は本物のプロだ。正式に勝負がしたい」
海坊主「俺に立ち会えと?」
ガーラント「うむ」
*海坊主はトラップの名手として知られるが、そのトラップはガーラントから教示されたものである、という設定が追加される。海坊主は氷室剛司の部隊に所属していた他にも、ガーラントとチームを組んでいた時期があったということになる。また、海坊主は依頼人との待ち合わせに「赤い薔薇」を使うが、これもガーラントの影響があるのかもしれない。
セリフ
冴羽「マイケル・ガーラント!?正気か!?ヤツは現役の殺し屋では世界No.1と言われている。ヤツに狙われて助かったヤツはいないぞ」
香「ガーラントって、そこにいる女刑事を殺しに来たんでしょ?さっさと仕事して帰っちゃえば良いのに!」*冴子が同室にいるというのにこのセリフは酷い
冴羽「香!どうして来た!?」
香「この目で見届けたいんだ!兄貴ん時みたいのは嫌だ!」
ガーラント「マイケル・ガーラントは引退したそうだ。ベリーハッピーと言っていた。老兵は消え去るのみ」
次回予告
冴羽「香、大事件だ!」
香「何だ、どうした?」
冴羽「海坊主が女に惚れた!」
香「え!?えらいこっちゃあ」
冴羽「だろ?ヤツめプレゼントまで用意して、何と相手はとびっきりのピアノ美人」
香「うひょお〜」
冴羽「しかも、彼女には影がある。事件のニオイがプンプン……」
香「もぉ……ビックリし過ぎて腰抜けちゃった……」
冴羽「うふっ。俺ちょっかい出しちゃお。シティーハンター『がんばれ海坊主!!ハードな初恋協奏曲』」
香「絶対見てね!」
キャスト
冴羽獠:神谷明/槇村香:伊倉一恵/野上冴子:麻上洋子
海坊主:玄田哲章/ガーラント:池田勝/牧師:島香裕/ボーイ:山寺宏一/花売り娘:神代智恵*1/女A:羽村京子/女B:星野美奈子/チンピラ:梅津秀行、西村智博*2
スタッフ
脚本 | 遠藤明範 |
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絵コンテ | 網野哲郎*3 |
演出 | 今西隆志 |
作画監督 | 谷口守泰 |
原画 | 逢坂浩司/野中幸/小森高博/小川瑞恵 |
動画 | 網野佳子/島田悌三/岩長幸一/アニメ・アール/たくらんけ/スタジオ 天 |
動画チェック | 石井康雄 |
色指定 | 横田政一 |
仕上 | スタジオ九魔/米村貞子/奥野孝一/公平保之/岩沢れい子 |
特効 | 千場豊(マリックス) |
背景 | スタジオ・イースター/矢島洋一/北川晴美/清水隆夫/南沢貞子/影山誠哉 |
撮影 | 旭プロダクション/長谷川洋一/末弘孝史/福田寛/土岐浩司 |
編集 | 鶴渕映画 |
タイトル | マキ・プロ |
効果 | 松田昭彦(フィズサウンド) |
整音 | 大城久典 |
音響制作 | オーディオ・プランニング・ユー |
録音スタジオ | A・P・Uスタジオ |
現像 | 東京現像所 |
メカニカルデザイン | 明貴美加 |
設定 | 秋山浩之 |
制作助手 | 渡辺葉子/佐藤あさみ |
制作進行 | 南雅彦 |
文芸 | 外池省二 |
製作担当 | 望月真人 |
本ページの情報は2020年3月時点のものです。
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