海坊主が恋をした!相手はピアノ美人の江梨子。だが彼女は何者かに命を狙われていた。彼女の婚約者は、政治家の汚職を追うルポライターだったが過労が原因で他界。彼女はその意思を継いで事件を追っていたのだが、相手から正体を嗅ぎ付けられてしまったのだ。負傷した海坊主は江梨子の言いなりに入院し、冴羽に彼女のガードを依頼。しかし、最後には病院を抜け出し冴羽と共に政治家たちを懲らしめる。
事件は解決し、江梨子は日本を去る決意をする。首には海坊主からのプレゼントが。しかし、彼女の心の中には婚約者の存在が消えずにいた。「ごめんなさい……私、今はまだ彼のことを……」「船が出る……早く行きな」
海坊主が突撃してくるシーンで流れる挿入歌「WANT YOUR LOVE(歌:北代桃子)」。
海坊主主役編。彼が心を惹かれたある女性との出会いを描いたエピソード。美樹が登場する前で、更にオリジナルエピソードということで相当自由を利かせた構成となっている。女心を掴む方法を冴羽に請う海坊主の姿など、今後はまずお目にかかれないだけに貴重なエピソードとも言えよう。
江梨子の婚約者は政治家の汚職を暴くルポライターであったが、寝る間を惜しんだ執筆活動により一月前に過労死してしまった。彼の意思を継ぎ事件を追うのは、彼のことをいまだ愛し続けているから。政治家と企業の癒着による汚職事件を追う内に、彼らが密会に利用するレストランを突き止めピアニストとして潜り込むのだが、そこで江梨子に惹かれたのが海坊主であったのだ。
結果的に海坊主の初恋は実らなかったことになるが、江梨子も海坊主のことを憎からず想っていたようにも取れる。だが、彼女の心の中にはいまだ婚約者の影が強く残っており、海坊主の愛を受け入れることができなかった。桟橋で見送る海坊主、船の窓からこちらを見つめる江梨子に背を向け無言で立ち去るラストシーンに哀愁が漂う。
ギャグシーンを極力抑え海坊主の恋と江梨子の心の闇にスポットを当てた作品。終わって見れば非常に暗く落ち着いたものであるが、これには、星山博之が初期の雰囲気を踏まえて作劇しているのに加え、江梨子役の鵜飼るみ子が一貫して暗いトーンで演技をしていることも原因に挙げられるだろう。ヒロインがピアノ美人ということもあってかピアノソロの劇判を多用したり、東京の夜景をイメージしたボードを背景に江梨子が自分の心情を吐露する場面など、雰囲気を醸し出す演出も一級。また、出番は少ないが香がウエイトレスとして潜入し、盗聴を行うなどの見せ場も用意されている。絵コンテに青木悠三が参加しているせいか、冒頭に登場する悪人が『ルパン三世』に出てきそうな顔をしている。
セリフ
海坊主「ピアノって楽器は、キーを叩く指から弾く人の心がそのまま音に出ちまうんだってな……。あんたのピアノの音は、力強くて優しいが、どこか寂しげに聴こえる……ちぃ!ガラでもねえこと言っちまった」
冴羽「この図体で入院したってぇからさあ、大方地雷でも踏んづけたのかなあ、と思いきや何のことはない、32口径を肩に撃ち込まれたくらいで大人しく入院とは、さすがのお前も弱いってわけか惚れた女の一言には、なあ海坊主!」
江梨子「この事件を追っていれば、彼がまだ、私の傍にずっといてくれるような気がして……」
冴羽「ふっ……政治家なら裏の世界のことも詳しそうだが……聞いたことがあるかなあ?シティーハンターと海坊主のことを」
次回予告
冴羽「パパだなんて勘弁してくれよ!俺は花の独身だぜ?きっと何かの間違いだ」
香「じゃあこの子は何なのよ?リョウをパパって呼んでんじゃん」
冴羽「だからきっと……ねえ……」
香「ウダウダ言うんじゃない!ぐーたらパパ。子供は嘘はつかないの。だから……動物園行こ?」
冴羽「動物園何でそうなるんだよ?」
香「奈々ちゃんパンダ見たいって」
冴羽「あーあ、早く本物のママに会いたいよ。シティーハンター『衝撃!!獠の父親宣言 寝てる子は起こすな』」
香「絶対見てね!」
キャスト
冴羽獠:神谷明/槇村香:伊倉一恵
江梨子:鵜飼るみ子/海坊主:玄田哲章/代議士:亀井三郎/社長:佐藤正治/手下A:山寺宏一/手下B:田原アルノ
スタッフ
脚本 | 星山博之 |
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絵コンテ | 港野洋介*1 |
演出 | 加瀬充子 |
作画監督 | いのまたむつみ |
原画 | 村中博美/遠藤栄一/山内貴美子/中島美子/からしまひろゆき*2/野田徳幸 |
動画 | 網野佳子/春日久美子/島田悌三/四本忠司/川島由美子/スタジオMAY |
動画チェック | 石井康雄 |
色指定 | 千葉賢二 |
仕上 | スタジオ・ボギー/岡本直子/石丸好美/小川澄子/福島友子 |
特効 | 千場豊(マリックス) |
背景 | 獏プロダクション/本田修/本田利恵/中原英統/平川栄治/西村康浩/服部一広 |
撮影 | 旭プロダクション/長谷川洋一/末弘孝史/福田寛/土岐浩司 |
編集 | 鶴渕映画 |
タイトル | マキ・プロ |
効果 | 松田昭彦(フィズサウンド) |
整音 | 大城久典 |
音響制作 | オーディオ・プランニング・ユー |
録音スタジオ | A・P・Uスタジオ |
現像 | 東京現像所 |
メカニカルデザイン | 明貴美加 |
設定 | 秋山浩之 |
制作助手 | 渡辺葉子/佐藤あさみ |
制作進行 | 藤本容伯 |
文芸 | 外池省二 |
製作担当 | 望月真人 |
本ページの情報は2020年3月時点のものです。
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