脚本:中原朗 監督:松野宏軌 ゲスト:菅貫太郎 石濱朗
今回の仕事は日本橋。地図からは「地獄」の文字が。強大な敵との対決を予感させる言葉に、松(斉藤清六)は思わず「後回しに出来ないんですか?」と弱気な発言。日本橋を探る松、おくら(萬田久子)、新吉(宅麻伸)の前に、上方からやってきた「梅川菊之丞一座」が通りかかる。松のドジにより瓦が座員の頭上に降りかかるが、全て受け止めてしまう動体視力の良さに怪しむ おくら は、松を潜入させようとするが失敗。
一方、多助の墓前に上方の大物・黒獅子の元締の娘である おきぬ(鈴川法子)を発見した お光(西崎みどり)は、事の真相を知る。京、大坂にある「近江屋」の番頭が次々に殺されているが、これは旅役者に扮した地獄火の伝蔵(菅貫太郎)の仕業だった。伝蔵は元々多助の仲間だった男だが、金さえ貰えれば何でもやる外道であり、その行動をたしなめた黒獅子の元締は伝蔵によって殺されてしまったのだ。伝蔵一味と伝蔵に殺しを依頼した人物を見つけて始末しようと考える橋掛人。おきぬ が父の仇を討とうするのを心配する新吉に、柳次(津川雅彦)は「情や義理に流されたんじゃ、裏稼業は務まらないぜ」とキツク言い聞かす。おきぬ は単身伝蔵に挑むが返り討ちに遭い死亡。
この一件は近江屋の身代を狙う何者かが企む筋書きのようだが、京、大坂の近江屋では既に番頭が伝蔵によって殺され死亡。残る有力候補は、上方からみっちりと商魂を叩き込まれてきた次期大旦那と言われる茂十郎(石濱朗)、二番番頭の五兵衛(千波丈太郎)の二人。このどちらかが伝蔵に殺しを依頼した人物であることは間違いないが、この二人、どちらも癖のある人物。伝蔵も「梅川菊之丞」として登場する近江屋の新作着物御披露目会ではっきりと判明することから、柳次と おくら は会場で見届けることとなるが、殺されたのは茂十郎の方だった。茂十郎はそのまま多助に殺しを依頼し死亡。茂十郎からの依頼料を分配し、伝蔵一味と依頼人である五兵衛を始末する橋掛人。
この作品自体、『新必殺からくり人』のあぶり出しを江戸地図に置き換えて作られている作品だが、それを逆手に取った設定「梅川菊之丞一座」の登場が面白い。大坂の日本橋から江戸の日本橋までの殺し旅は『新必殺からくり人』でお艶(山田五十鈴)たちが辿った江戸日本橋から京への道のりの逆を突いている。菅貫太郎の女形殺し屋と言うのも、これまた珍しい。得物は仕込み千枚通しや、傘から発射される長い針。菅貫太郎と津川雅彦との共演もファンには感涙モノだが、菅貫太郎を始末するのは宅麻伸だった……。出来れば、津川vs菅を見てみたかったところ。
さて、話的には大店の身代を巡る社内闘争に殺し屋が絡むお話だが、石濱朗、千波丈太郎と両者とも癖のある人物を演じている。石濱演じる茂十郎は妻子持ちでありながら若い女を囲い、千波扮する五兵衛は社内で派閥を形成し不穏な動き。結果的に、五兵衛が依頼人であることで決着を見る。新作着物を披露するファッションショーで茂十郎を始末する伝蔵、あれは確実に誰かに見られるぞ。柳次の殺しの演出は、ちょっと派手過ぎるか。