脚本:田上雄 監督:松野宏軌 ゲスト:勝部演之 芝本正 栗田陽子
天保4年9月12日。庶物高騰により庶民の暮らしが圧迫される中、絹相場が大当たりで喜ぶ宗右衛門(睦五朗)からの依頼は佐渡相川に住む山師・加茂屋市兵衛(勝部演之)殺し。しかし元締の店である蕎麦屋から出た瞬間に刺客から狙われる秀(三田村邦彦)は元締・宗右衛門に対しても警戒心を働かせる。その宗右衛門、仁十郎(藤岡重慶)に「俺の店で狙うなよ」と忠告。秀を狙った刺客は宗右衛門の手によって粛清される。
佐渡で調査を開始する仕事人たち。市兵衛は「仏の市兵衛」と言われるほどの好人物で、綾麻呂(笑福亭鶴瓶)などは「狙う相手を間違えたんとちゃうか?」と疑問に思う始末。その綾麻呂は与三郎(中嶋俊一)に博打に誘われ鉄火場へ。そこでは、博打に興じる連中を佐渡奉行所の役人が捕縛し水かい人足に。与三郎と佐渡奉行所の役人・片桐十三郎(芝本正)がグルゆえに出来ること。水かい人足は非常に過酷な労働のため、人手が足りないのだ。
さて現在、金山堀の請負業者である山師を束ねているのは大黒屋角兵衛(永野辰弥)だが、病身であり医者からも見離された身。そこで片桐の後押しにより市兵衛が山師の元締に就任したが、快く思わないのは角兵衛の娘・お牧(栗田陽子)。早速市兵衛に掛け合うが、夫である直次郎(栗田芳廣)が市兵衛とグルであり、更には角兵衛が指示して掘らせた金脈から出た大量の金を横領着服していたことから お牧は殺されてしまう。
仕事人たちは市兵衛らが集まる大黒屋の屋敷へ潜入し悪党一味を仕置する。大黒屋に殺しを見られてしまった秀だが、去った後静かに頭を下げる角兵衛。角兵衛こそが、殺しの依頼人だったのである。
「相手は長崎のぜいたく女」で少しだけ見せた「依頼人にスポットを当てる」という手法がここから本格的に露出してくることになる。まだまだ依頼人の事情を掘り下げるところまではいかないが、ワンクッションを与えることによりドラマの「情緒」としてこの手法は作品の密度を若干ながらアップさせるのに一役買っている。
今回はレギュラーメンバー4人全員が一つの画面に揃うことがないままに物語が進行していく。今後はこういったレギュラーメンバーの顔合わせが限定的になる回が多くなる。殺しの場面しか登場しない、なんて事もあるなどなかなか見ていて苦しいものがあるが、仕切人の高橋悦史のように完全に出演しないのよりはマシか。
脚本は田上雄。田上と言えば大ベテランの脚本家で、代表作は必殺の他に『水戸黄門』。本作のナレーターである玉井孝が朗読する内容は、あたかも水戸黄門で芥川隆行が朗読しているかのような内容に感じた。なお、この回で若紫の身請けに必要なお金が500両であることが判明する。
史実人物
道中東吉が匿い、お銀が出会った若い男。農民をいじめる役人を斬り逃亡中の国定忠治であった。この時24歳。この後17年間の逃亡生活の後、非業の死を遂げた。