umikaze.blog

日本の片隅でひっそりと暮らすおじさんが書くブログ

必殺仕置屋稼業 第5話「一筆啓上幽鬼が見えた」

脚本:安倍徹郎 監督:松野宏軌 ゲスト:菅貫太郎 川合伸旺 二宮さよ子 三条泰子 志賀勝 大木正司

2年前に死んだ芸者・おときの恨みを晴らして欲しいと、盲目の三味線弾き・おしん(森崎由紀)の依頼を引き受ける おこう(中村玉緒)。おとき はライバルだった中州の芸者・およう(三条泰子)に殺された、と主張する おしん の証言が本当かどうか、およう と おとき殺しの裏を取るため行動を始める主水(藤田まこと)たち。おとき の死因は酒に酔っての水死だが、それを知った市松(沖雅也)は別行動を開始する。捨三(渡辺篤史)、印玄(新克利)らはもちろん嫌な顔。

さて、芸者の世界で一つの話題が。評判の絵師・国春(菅貫太郎)が、江戸各地区から選抜された美女5人の姿絵を描くのだと言う。およう は何としてもその5人に選ばれたいため、パトロンの円屋高兵衛(川合伸旺)にすがるのだが、金の力では版元を買収できず苦い顔。そんな中、およう の新たなライバルである菊次(二宮さよ子)が姿絵の有力候補という噂が。およう は国春に体を売って姿絵のモデルに選んでもらう約束を取り付けるが、菊次が選ばれたことを知り愕然。往来で女同士の喧嘩を繰り広げ、挙句円屋高兵衛には「菊次を殺して」と殺しを持ちかける。おとき を殺したのも実はこの二人で、殺し屋・竹次郎(志賀勝)に依頼して泥酔し川で溺死したように見せかけていたのだ。

別行動の市松。殺しの手口から昔馴染の仲間・竹次郎を割り出し事の真相を聞き出す。一方、殺しの裏が取れた主水たちも、悪女およう と円屋高兵衛を仕置するため乗り出す。円屋高兵衛は印玄が始末した。ところが およう は主水が乗り込んだ時には殺されていた。一体誰が?市松は、もう一つの依頼を遂行するため、菊次のもとを訪れていた。

夜の世界で繰り広げられる女の争い。大奥女の権力争いとはまた違った恐ろしさを見せ付ける。安倍徹郎お得意の分野と言えるか。松野宏軌が余計に飾らずスマートに演出しているのも、かえって恐ろしさを引き立たせていて見ごたえがある。女同士の取っ組み合いの喧嘩の凄まじさは、あの場にいた主水と同じく呆然となることだろう。男には手が出ない女の修羅場。

ライバルを非合法的な手段で陥れる悪女・およう にスポットライトを当ててはいるが、クライマックスでは若く謙虚な菊次が恐ろしい本性を見せるどんでん返しが山場。菊次のためを想い、およう を殺害した付き人・小八(大木正司)を川に突き落とし、笑みを浮かべながら足蹴にしてなぶり殺すシーンは鳥肌が立つ。二宮さよ子の冷徹な美しさも際立っている。

およう&円屋高兵衛殺しは おしん の依頼だとして、菊次を殺すよう市松に依頼したのは誰?円屋高兵衛が「同じ殺し屋では後腐れが……」などと言っていることから、およう&円屋高兵衛と見て間違いない。しかし、あの場面では市松のことを全く匂わせてはいなかったのだが、最後の最後でチラっと見せる裏話的やりとりが奇妙な余韻を残してくれる。この辺りが、前期必殺シリーズの素晴らしさの一つか。

仕置シーンでは、円屋高兵衛演じる川合伸旺が印玄に仕置される。小判を撒き散らしながら「止めて助けて止めて助けて……」が面白い。「ボキボキ」のSEの後地面に小判が叩き付けられる演出も成金の最期といった感じで良い。二宮さよ子演じる菊次を仕置するシーンでは、絵師の国春が見ている前という緊張感漂う場面。国春が目を落とした一瞬の隙を突いての仕置。殺害場面被目撃率の高い市松も今回は大丈夫っぽい。死後硬直で目を見開き硬くなっている菊次に対し「もっと柔らかく」と抜けた声で指示を出す国春@菅貫太郎が面白い。あの後死んだのが分かっても「あ、そう」で終わらせてしまうんだろうな、この人。