umikaze.blog

日本の片隅でひっそりと暮らすおじさんが書くブログ

暗闇仕留人 第20話「一途にて候」

脚本:村尾昭 監督:田中徳三 ゲスト:小林昭二 石田信之 袋正

町奉行所に新規採用された加納一平(石田信之)は、盗賊浪人との捕物の最中に殺された父の跡を継いで同心となった正義感の塊。父の死を見届けたのが、奉行の甥にあたる与力・平田玄一郎(袋正)。しかし主水(藤田まこと)の表情はなぜか暗い。

勘八(近藤宏)が仕切る賭場へ踏み込んだ平田たち同心。ところが勘八から賄賂を貰い捕物を中止。チンピラ一人を捕まえた加納だが、平田の取り巻きである水上(小美野欣二)と佐山(坂口徹)に止められる。加納は奉行所に戻った後、水上と坂口から小判を渡されるが、実直な加納は受け取りを拒否。平田は金で奉行所を掌握しているため、何としても加納に金を掴まそうと躍起になる。加納は父の墓参りで叔父の笠井新兵衛(小林昭二)に父の死の真相を詰め寄るも「奉行所内では要領良くしろ」と言われ困惑。しかし、幼馴染で新兵衛の娘・桃江(奈加川由美)とは良いムード。その桃江を平田が狙っていた。

主水は貢(石坂浩二)たちに加納の護衛を依頼。「昔に無くしたものを見せ付けられているうような気がしてな」感傷的に漏らす主水の言葉に「甘いよ」の一言。しかし、なぜ奉行所の同心同士で争いが起こるのか。大吉(近藤洋介)や おきん (野川由美子)は不思議で仕方が無い。主水曰く、今の奉行所の体制は腐りきっており、奉行所内の同心9割は何らかの悪事を働いている。公務員の安月給ゆえに袖の下を貰うのはまだ良い方で、中には悪事を働く商家等を強請り金品を強要している者までいるのだと言う。そして、加納の父を殺したのも平田なのではないかとの憶測が……。いずれ加納に害が及ぶ。それを主水は防ぎたいのだ。

加納の歓迎会。主水が安木節を踊る中、平田と勘八が罠を仕組むが貢の好判断により危機を脱出。また、捕物の最中に加納の口を塞ごうとした平田だが、これも大吉の働きにより間一髪セーフ。加納はこれまでの体験により、笠井に真相を詰め寄る。役所は腐っている。父を殺したのは、実は平田なのではないかと。そして、笠井も汚い金を貰っているのではないかと。桃江が加納のもとへ戻ることにより目を覚ました笠井は影腹を斬り平田の悪事を奉行へ直訴しようとするが、平田によって切腹に仕立てられ死亡。そして、平田によって悪事を捏造された加納は、遂に役所内で抜刀。奉行所内での抜刀の咎により水上と佐山によって斬殺されてしまった。悔しさを滲ませる主水。

加納に金を掴ませるために平田から預かった小判5両を仕置料にして平田一派を仕置する計画を練る貢たち。ただ殺すだけでは面白くない。惨めに殺してやろうと企む仕留人の取った行動とは?

新人同心の正義が踏みにじられる作品。ミラーマンこと石田信之が実直な同心を演じている。もう少し、小林昭二の出番が多いと良かったんだがなあ。小林昭二、人相悪すぎ。

とにかく、奉行所の役人が救いようの無い集団と化していることが前提で話が進む。統括する奉行自体は病気がちで甥の平田@袋正の言いなりのようだし、その平田は金で同心たちを掌握し、邪魔であれば容赦なく消す。同心のほとんどが悪事に手を染めているようだし、最早平田たちがどうのこうの、と言うよりも、奉行所全体がそのような組織に成り下がってしまっていることが窺える。

主水はそんな中、加納@石田信之に過去の自分を照らし合わせた。主水も、恐らく奉行所へ奉職した頃は同じような正義感の塊だったのだろうが、奉行所の腐った体制を目の当たりにし、加納のように抗うのではなくあえてその流れに身を任せた昼行灯として生きるようになった。仕置人において主水は、腐った体制や世の中と自分の中の燻った正義感から生まれた欲求を非合法的な仕置に置き換えて捌け口にしていたが、そんな人生を歩むが故に、それが出来ない生真面目な加納を救ってやりたかったのではないだろうか。

貢たちは平田らを惨めな形で殺そうと、それぞれを同士討ちに見せかけるよう仕置し、事件調書で主水が平田の不正を暴く形で決着を付けたわけだが、奉行所自体がどうしようもない組織であるため、例え平田一派を仕置したとしても結局は何も変わらないだろうし、末端の悪人を仕置できても、世の中の構図や社会の体制までには到底及ばないという仕留人たちの無力感が伝わってくるわけであって、これらの積み重ねが、最終回の貢の苦悩「俺たちがこの稼業を続けていて、何か世の中が変わったか?」に繋がってくる……そんな気がする。

主水の殺陣シーンでは、田中徳三っぽいライティングとアングル。