花魁の生爪が偽物であったことがきっかけで、豪遊した代金を踏み倒した材木問屋・木曽屋を取り立てるおえんだが、予め生爪のカラクリを知った上での行為と知りおえんは嫌悪感を隠せない。強引な策で取立てを強攻するがその行動が仇となり、おえんの幼馴染であるおちかが毒牙にかかってしまう……。
おちか役には大塚良重、木曽屋役は原口剛、三州屋役は牧冬吉。
吉原では花魁が気に入った客に自らの生爪を剥がして差出し*1、客はその心意気に打たれ大金を差し出すということがあるのだが、豊鶴が木曽屋に送った生爪は実は別人の生爪*2で、これに癇癪を起こした木曽屋が当日豪遊した代金を踏み倒したことが事件のきっかけ。「悪いのは(偽物を差し出した)豊鶴じゃないですか」と浜蔵は言うけれども、新五郎に言わせれば「偽物と分かっても黙ってやるのが男と言うもの。吉原の客は、それくらいの度量がないと粋じゃない」そうだ。
おえんは木曽屋へ出向くのだがこの木曽屋がとんでもないヤツで、生爪が偽物であったことは先刻承知。そのカラクリを逆手に取って代金を踏み倒したのだ。計画的犯行というもので、これにはおえんも怒り心頭。まず木曽屋の弱みを握るために行動し、手紙などで陰湿とも言える取立てを強攻。業を煮やした木曽屋は馴染みの口入屋・三州屋を使っておえんを暴行することを計画するが、偶然喜の字屋に居合わせたおちかをおえんと取り違えて誘拐。そのまま乱暴してしまう。
このおちか自身、大店の大阪屋彦右衛門に嫁ぐも姑と折り合いが悪く、また大店の嫁ということで堅苦しい自分の人生に嫌気が挿しており、自分をメチャクチャにしたかったし、息苦しい毎日を壊したかった。だから、暴行を受けた後も木曽屋と三州屋に抱かれ、金まで持ち出したのだ。
この事件をきっかけに、木曽屋一味は大阪屋にまで魔手を伸ばそうとする。おえんはいよいよ三州屋へと乗り込み、木曽屋と三州屋を成敗。木曽屋の正体は元作州浪人・丹下小兵ヱで剣の腕も立ち、おえんも危機に陥るのだが、そこへ助けに来るのが新五郎。相変わらずカッコイイ登場の仕方だ。
登場人物の想い
この回では、それぞれの想いが交錯する。
新五郎が又之助を想う気持ち。浜蔵がおさとを想う気持ち。おえんがおさと、新五郎、又之助を想う気持ち。新五郎は又之助におえんの想いを伝える。「お前を早く馬屋稼業から足を洗わせたい」と。でも、又之助はおえんに惚れているから馬屋を辞める気は無いし、新五郎を兄貴と慕っているから今のままで良い。お互いを信頼している。
浜蔵は色気づいてきたおさとを見る目が変わってきているそうだし、そんなおさとの成長を見守るおえんの気持ち……実の娘ではないおさとに対し葛藤を抱えながら見守るおえんを、新五郎もまた見守る。新五郎に「西河岸の女って、どういう女なの?」とさりげなく聞くあたり、おえんも満更ではない様子。
キャスト
ゲスト
大塚良重/原口剛/牧冬吉/水上保広/多賀勝/日高久/えがわあつこ/はりた照久/吉川佳代子/太田和余
スタッフ
原作 | 南原幹雄(新潮文庫・小説推理より) |
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チーフプロデューサー | 江津兵太(テレビ東京)/桜林甫(松竹) |
プロデューサー | 小川治(テレビ東京)/中嶋等(松竹)/斉藤立太(松竹) |
脚本 | 和久田正明 |
撮影 | 石原興 |
照明 | 中島利男 |
美術 | 倉橋利韶 |
録音 | 中路豊隆 |
編集 | 園井弘一 |
殺陣 | 宇仁貫三 |
装飾 | 清水与三吉 |
調音 | 鈴木信一 |
記録 | 野崎八重子 |
助監督 | 北村義樹 |
制作主任 | 渡辺寿男 |
進行 | 楳村仁一 |
スチール | 佐々木千栄治 |
広報担当 | 高橋修(テレビ東京) |
装飾 | 高津商会 |
衣装 | 松竹衣装 |
結髪 | 八木かつら |
装置 | 新映美術工芸 |
現像 | IMAGICA |
協力 | 京都大覚寺/鈴乃屋/エクラン演技集団 |
主題歌 | 「雨あがり」 作詞:麻こよみ/作曲:猪俣公章/編曲:小杉仁三/歌:坂本冬美(東芝EMI) |
製作協力 | 京都映画株式会社 |
監督 | 大州斉 |
製作 | テレビ東京・松竹株式会社 |