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日本の片隅でひっそりと暮らすおじさんが書くブログ

眠狂四郎 円月殺法 第8話「無惨!乙女肌魔性剣 −三島の巻−」

侍三人を瞬時に斬り殺すのは、宿場で恐れられる臥竜軒(小林稔侍)。薩摩の刺客から眠狂四郎(片岡孝夫)の腕前を利き胸を躍らせる。一方その狂四郎は、狂四郎に斬られた薩摩隼人党の縁者の女たちに囲まれるも危機を脱する。「死霊の呪縛」にとりつかれた女たちはやがて同士討ちを始め、正気を取り戻し逃げ出した女たちも薩摩の刺客たちによって斬られ、生への執念を口にしながら死んでいった。

さて、過去臥竜軒に破れ無念の思いを抱きながら死んでいった父のためにもせめて一太刀、と剣術の訓練をする須磨(藍とも子)もまた、父という「死霊の呪縛」にとりつかれた女であった。女を捨て剣の修行を行うも、それはとても剣術と呼べるものではなかったが、無念を晴らす策を請う姿に絆されたのか、狂四郎は臥竜軒の弱点を突いた戦法を授けることに。

無双の臥竜軒、唯一の弱点こそ「女」であった。性欲を抑え剣術一筋に生きる臥竜軒にとって、女の裸は禁断の果実。その果実を前に目が眩んだ隙に一太刀浴びせる須磨。これで呪縛から解き放たれ「女」に戻れると思った矢先に臥竜軒が現れる。全て狂四郎の計略だと知った臥竜軒は復讐のため須磨を犯し、媚薬を与え交じわりながら狂四郎の前へと現れる。狂四郎は、須磨を盾とする臥竜軒を前にどう立ち向かうのか。

今回は一転して救いの無いお話。冒頭、ギラギラとした目つきで侍を瞬殺する臥竜軒に小林稔侍。小林稔侍はその後の主演作『お助け同心が行く!』などを見ていても、お世辞にも殺陣が上手いとは思えないのだが、今回は若い時に演じたということもあってか迫力のある殺陣を披露している。

異様な怖さ、と言えば薩摩隼人党の縁者たちによる狂四郎への謀略。これが失敗した後は全員自決をする覚悟であったが、薩摩藩による「狂四郎を外道とする洗脳」が解けた女たちは脱走を決意。ここで血に染まる修羅場が展開される。逃げ出した者たちももちろん、薩摩の刺客によって口を封じられてしまうのだが、その内の一人が「男たちのためになぜ女が死ななければならぬ……生きたい……生きたい……!」と生々しいまでの生への執着を口にしながら死んでいく様が胸をえぐる。

臥竜軒に一太刀浴びせたいと狂四郎に教えを請う須磨。「必殺の一撃を伝授願いたい」と申し出るも、「自分よりも腕の立つ相手への必殺の一撃など、あろうはずがない」と冷静に断る。しかし、死霊の呪縛から解き放たれ女として生きる決意を固めた須磨に結局は協力。それは、狂四郎が臥竜軒と対峙した際、臥竜軒が女への弱さと異常な性欲によって冷静さを失ったことを突いたものであった。いよいよ臥竜軒と対峙する須磨。一瞬の隙を突いて全裸となった須磨は、眩んだ臥竜軒に一太刀浴びせ本懐を遂げる。しかしその後、逆上した臥竜軒によって犯され、媚薬まで飲まされ性の奴隷とされてしまう。須磨を抱いたまま狂四郎と対決する臥竜軒。しかし狂四郎は須磨ごと円月殺法で返り討ちに。「この姿で正気に戻った須磨殿が、生きていられると思うか」やるせない最後である。結局、狂四郎に出会ったときから須磨の運命は決まっていたのだろうか。いや、父が臥竜軒に敗れたときから、最早このような運命を辿る宿命であったのだろう。

キャスト

眠狂四郎:片岡孝夫/島本半三郎:関根大学/森田周之助:鶴田耕裕/松浦与一郎:片岡松之助

臥竜軒:小林稔侍須磨:藍とも子小枝:小林伊津子/良左衛門:松田明/九兵衛:須永克彦/作三:有光豊/俊芳:浜世津子/鈴:門谷美佐/お幸:桐生奈知/棟方洋子/北原将光/徳永まゆみ/玉野玲子/加藤正記/深見辰二/佐々木常雄/伊藤克美/服部明美

スタッフ

企画 神山安平(テレビ東京)/大塚貞夫(歌舞伎座テレビ)
プロデューサー 犬飼佳春(テレビ東京)/小久保章一郎、沢克純(歌舞伎座テレビ)
原作 柴田錬三郎「眠狂四郎孤剣五十三次」より(新潮文庫版)
脚本 木久谷清之
音楽 岩代浩一
撮影 中村富哉
美術 太田誠一
制作主任 黒田満重
照明 南所登
録音 田原重鋼
調音 本田文人
編集 河合勝巳
装飾 玉井憲一
記録 川島庸子
装置 松野喜代春
進行 大志万宗久
助監督 木下芳幸
殺陣 楠本栄一
特技 宍戸大全
ロケ協力 大覚寺
装置 新映美術工芸
床山・結髪 八木かつら
衣装 松竹衣装
小道具 高津商会
現像 東洋現像所
ナレーター 佐藤慶
制作協力 京都映画株式会社
プロデューサー 佐々木康之
監督 皆元洋之助
製作 テレビ東京/歌舞伎座テレビ

次回予告

濡れた唇に怪しく光る毒の針。眠狂四郎を襲う暗闇地獄。武士の暮らしに背を向けて生きる夫を仕官させんがため、隼人党に利用される妻。暗黒の中で無想正宗を振りぬく狂四郎。「冥途の土産に、円月殺法ご覧にいれよう」