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日本の片隅でひっそりと暮らすおじさんが書くブログ

必殺仕事人V旋風編 第14話「主水、大奥の鶴を食べて失業する」(終)

脚本:吉田剛 監督:松野宏軌 ゲスト:本郷直樹 舟倉由佑子 柳原久仁夫

百軒長屋のゴミ捨て場で鶴の死体を発見する おりん(桃山みつる)と千代松(遠藤太津朗)。銀平(出門英)にさばいてもらって長屋の皆さんへ御裾分けで大喜び。主水(藤田まこと)も肉を貰って見て見ぬ振り。翌日、吹上奉行目付・山口俊助(本郷直樹)と南町奉行所町会所付与力・金丸治平(柳原久仁夫)が奉行所に現れ、吹上御苑から逃げ出した御台所寵愛のタンチョウヅル・ユキシロの捜査が命じられた。方角から石川島界隈に逃げ出した模様。銀平がさばいたのは大奥の鶴だった……主水は大慌て。

さて、鶴の探索について政(村上弘明)のところへ訪れる大奥女中・滝山(舟倉由佑子)。ユキシロの世話をしており、政に連れられ百軒長屋へ。その百軒長屋では、鶴が死んだのを鷹の仕業に見せかけようとした おりん と千代松の偽装工作が失敗し、二人は長屋から逃亡。百軒長屋の住人は奉行所に捕縛されてしまう。その様子を見ていた銀平。鶴は首を折られ既に死んでおり、その肉を住人が食べたくらいでどうして捕縛されるのかと疑問。そして、その様子に憤りを感じた滝山と政は、帰り道で侍二人に襲われる。銀平によって助けられるが、その侍は山口と金丸の二人だった。この二人、百軒長屋を舞台に何かを企んでいる様子。

捕縛された住人の罰金は十貫文。しかし低所得者が集まる長屋だけにほとんどの住人はお金が無い。そこへ金丸が助け舟。貸金業を営む手代・武助(中島俊一)が、一年分割利息は三分で罰金十貫文を住人に貸し付けると言うのだ。お玉(かとうかずこ)の忠告も聞かず、公的な後ろ盾もあることから借金に応じる住人たち。長屋の住人ばかりが狙われていることに疑問を感じる順之助(ひかる一平)。山口と金丸を見張る銀平と政は、屋形船での密会現場に遭遇。山口、金丸、奉行所で住人にお金を貸し付けた武助、そして土地売買を生業にする戸吹屋(徳田興人)の4人が会合。百軒長屋の土地を他の用途に転売し大きな利益を得ようと言うのが今回の狙いだったのだ。侍に襲われた一件以来、滝山と同棲中の政。しかし、政は滝山に城へ帰るよう薦める。滝山は山口と惚れ合う仲だが、政は山口が滝山の命を狙っていることを口にも出来ず「誰も信じちゃいけねえよ」と釘を刺す。それでも、山口の事を忘れられない滝山。

百軒長屋からは借用証文を盾にされ住人が続々と退去。僅かに残った家も戸吹屋の強硬手段によって破壊され お玉も途方に暮れる。百軒長屋の家々が次々と取り壊されていく様を笑みを浮かべて見つめる山口ら3人。滝山も百軒長屋に来ており、この事態を山口に詰め寄るも、逆に刺されてしまう。滝山を助ける政は銀平のサポートで何とか脱出するも、滝山は致命傷を負い瀕死。滝山に惚れた政は何とかして助けたいと思い、滝山から預かった仕事料で山口たちを仕置することに。

夜になり、政たちを炙りだすために百軒長屋に火がつけられた。燃え盛る火の中、標的を始末する仕事人たち。しかし、百軒長屋から脱出する途中、順之助の火薬袋に火がつき順之助は爆死。それを助けようとした銀平も爆風に巻き込まれ、政の尽力も虚しく大川へ流れていった。「今回の仕事は高くつきやがった……」主水はそう呟くことしか出来なかった。

旋風編最終回。百軒長屋の存亡にかかる展開。やっぱりこの展開は、製作側が旋風編自体を闇に葬るために用意したものなのかな、という気もしないでもないのだけれど。幕府の福祉政策で始まったこの百軒長屋事業も、結局幕府のお偉いさんの私利私欲のためにあっという間に取り潰されてしまうわけね。旋風編自体は3ヶ月程度の放送だけど、百軒長屋自体は一年くらいしか存在しなかったってことになるのかな?

最終回……急遽取り繕ったような展開なのだけれど、それなりにまとまってはいると思う。大奥の鶴事件を発端に、百軒長屋の住人が退去せざるを得ないレールが悪人によって敷かれ、何も知らずそれに乗っかっていく住人たち。第1話でも、口入屋が住人たちを雇用し、そのついでに博打などで借金を作らせて……と言う展開があったが、今回は遂に百軒長屋そのものを消失せんとする企みにまで発展。これが幕府の福祉政策の顛末だと言うのなら、銀平が言う「お上のすることなんざこんなもんよ」の言葉が当てはまる。

さて、政が大奥女中に肩入れし最後は惚れ合うという展開だが、最終回と言うことを鑑みるとこれが「死亡フラグ」となるのかな、と思いきや、死亡するのは銀平と順之助。順之助は腰の火薬袋に火が付きそのまま水中で爆死する壮絶な展開だが、銀平はそのまま川を流され虫の息。政が橋の上で手を差し伸べるも「手を離せ……お前まで……!」の言葉と表情は、風雲竜虎編で政がトラウマになるのも分かる気がする。

最終回まで見た感想

百軒長屋と言う新たな舞台設定を設けた上で、前半は割りと手堅い作品が続き、銀平の過去編なども織り交ぜ正統な出だしではあったが、途中のスペシャル『必殺忠臣蔵』の放送を挟んだ後あたりからは、過去のスペシャル作品のリメイクや「主水の隠し子」など変化球で勝負をし、何とか作品世界の維持に努めようとした努力が伺える。現実世界の風俗を色濃く取り入れると言うコンセプトは、恐らく最も人気のあった仕事人IVあたりを目指さんとしたものだとは思うが、ほとんどが外れに終わり、おりん と千代松と順之助のコメディパートも毎回寒い内容で時間の無駄だった。万七親分……('A`) お玉の「虎の娘」の設定もストーリーに絡んでこないし、銀平と政は出番が少ないし、主水もいるのかいないのか分からない回もあったし、話自体も当たり外れが大きいし、全体として歯車が噛み合っていないような印象を受けた。前半のテンションをもう少し維持できれば……と言う感じも受けたが、ウィキペディアの必殺関連記事を読むとこの時期必殺の現場も色々と混乱していたようなので、仕方が無いと言えば仕方が無いと言うことだろうか。何より主要レギュラーが新たに登場となったことから、主水と政への活躍の比重がこれまでよりも更に増しているにも係わらず、その両名の出番が少なかったり影が薄かったりするのが、この作品の何よりの敗因だったのではないだろうか。出演者のスケジュールに振り回されて、脚本、演出が大幅にぶれてしまった。一度ぶれた軌道は修正が難しかったのか、結果的に視聴率向上のためのテコ入れとしての打ち切りという無茶苦茶な幕切れではあったが、「無かったことにする」という意味合いではこの作品に相応しい最後だったのではないかと思う。