脚本:筒井ともみ 監督:原田雄一 ゲスト:谷口香 佐藤京一
北海道・江差に踏み入れた坂東京山(京マチ子)一座。江差では最高権力者である網元・江差屋(永野辰弥)一味が勝手し放題。出稼ぎでやって来た漁師をタコ部屋に監禁し、私利私欲のために過酷な労働を強要させ家族たちを苦しめていた。その江差屋の昔の妾で、地元に店を持つお栄(谷口香)と、今の妾である娘のおしん(仁和令子)の関係はギクシャク。おしん も止む無く江差屋と関係を持っているのだが、心はある一人の若い出稼ぎ漁師に向けられており江差屋はそれが気にいらない。
晋松(高橋悦史)は江差屋の動向を探るためタコ部屋へ潜入。しかし、江差屋配下の勝造(佐藤京一)は用済みとなった出稼ぎ漁師たちを惨殺。晋松は辛くも脱出に成功する。一方、お栄は おしん の前でつい口を滑らせ、江差屋の配下に想い人の漁師を始末させたことを言ってしまう。おしん は江差屋に反抗し、お栄は癇癪を起こした江差屋に泣いてすがるも江差屋の怒りは収まらず、報復としてお栄は無一文で村を追放されてしまった。しかし、追放されたことにより母娘の絆が甦り人間らしい心を取り戻し新たな人生を歩み出そうとする2人に、京山は仕置を免除するのだった。
江差屋一味を始末した京山たち。次の舞台は青森だ。
村の権力者の度を越えた横暴を始末する北海道・江差での一幕。序盤はこの作品の縦糸である「女の恨み晴らし」が見えて来ず、「漁師達の妻や娘の恨みが焦点か?だとしたらぼやけた焦点だな」と感じていたのだが、実際は悪党一味に止む無く加担していた谷口香、仁和令子の「母娘」が最大の被害者であったのだ。
村社会の中、村八分を恐れて権力者に従っていた汚い母に反発を続けていた娘が母の本当の苦難を知り、母を追い江差から離れ手を取り合う姿を、遠くから見つめ軽く微笑む京山の表情が印象深い。
北海道の寒々しさを表現した乾いた画作り。京山出陣の合成降雪。京山仕置シーン一連(黒装束であることを活かし暗闇の中得物である簪の赤、そして京山の"目"を活かす演出で接近を表現〜合気道で江差屋を投げ伏せ簪を取る→構える→突き刺すの3つのストップモーション)。原田雄一の演出も気合が入っている。