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日本の片隅でひっそりと暮らすおじさんが書くブログ

必殺からくり人富嶽百景殺し旅 第7話「駿州江尻」

脚本:山浦弘靖 監督:高坂光幸 ゲスト:真木洋子 辻萬長 今井健二

男に絡まれている女・お京(真木洋子)を助ける唐十郎沖雅也)だがその様子は少々おかしい。今回の仕事「駿州江尻」の絵で赤く染まったのは富士颪で飛ばされた紙切れ。この紙切れを拾った者たちが次々と変死している模様。鈴平(江戸屋小猫)が調べると、被害者のダイイングメッセージに「船」の文字。駿河屋利兵ヱ(芦田鉄雄)が将軍家献上船を作っていることに由来するのか?紙が飛ばされた日、日本でも指折りの船大工である佐平(遠山一次)が殺されている。

まずは安来節興行の許可を、とお艶(山田五十鈴)と宇蔵(芦屋雁之助)は土地を束ねる政五郎(今井健二)に認可を請うが、献上船を作る最中のこともあり断られてしまうが、バクチをネタに何とか許してもらうことに。しかしその態度を政五郎は怪しいと睨む。唐十郎は助けたお京が佐平の女中であったことを知りお京に事件の真相を尋ねるが、帰り道に浪人に襲われてしまう。当初政五郎とは別にお京や唐十郎を嗅ぎ回る仁助(辻萬長)の仕業かと思われたがどうも違う。背景には、献上船受注落札に掛かる黒いからくりがあった。

お京は佐平の図面を駿河屋へ持ち運ぶための連絡係だったのでは?お艶はそう睨にお京に罠を仕掛けることに。お京を小屋へ呼び出す手紙を送る唐十郎だが、程なくして小屋は政五郎一家によって爆破されてしまう。お京は政五郎の下で紛失した図面の残り一枚を探しており、その政五郎の後ろ盾が駿河屋という訳だ。そして仁助は佐平の息子で、お京と惚れ合った仲であったことも分かった。惚れた男の父親を裏切るには余程の理由があるに違いない。その理由を探るよう命じるお艶。

二年前、お京は仁助と共に江戸へ向かおうとしたが断った。それは、お京の妹で足が不自由なお美乃(加藤さよ子)が仁助に想いを寄せていたからだ。お美乃はお京の不注意で一生足が不自由になってしまった。お京はその重荷を背負い生きてきたが、好きな男が同じ男であったため、お美乃の事を想い身を引いたのだ。しかし、その姉妹愛に付け込む政五郎はお美乃を人質に佐平の図面を盗むよう強要したのだった。自分の幸せを捨ててまで妹に尽くすお京の姿に心を打たれたお艶はお京を許す。しかし、唐十郎の加勢が一歩遅く政五郎一家の凶刃に倒れてしまう。絶命するその間際まで、仁助とお美乃の幸せを祈り、最後の図面を破ろうとしたお京。その恨みを晴らすため、お艶たちは政五郎一家へ乗り込む。

濃密な人間模様が交錯する作品。お京、お美乃、仁助の3人が織りなす愛憎が随所で絡み合い、そこに付け込む悪人と、その悪事を暴こうとするお艶たちからくり人が入り乱れる。お京がお艶に全てを告白するシーンは視聴者に痛烈に訴えかけてくるし、その後続くお京絶命シーンまでのテンションは唐十郎の怒りとスピーディーな殺陣も手伝って最高潮に達するはず。お京の訴えとその想いを全て受け入れ、お京を許す判断を下したお艶の懐の深さや、司令塔として座員や唐十郎に的確に指示を出す姿も強く現れている。

唐十郎から小屋へ呼び出され狼狽する表情と交互に挿入される導火線や、お京と仁助が再会する浜の波打ち際で、見張っていた鈴平が手前の木から急に落ちてくるなど、個性的な演出も光る。さすがは高坂監督。他の作品に比べて際立つものがある。

殺しのシーンでは、何といっても唐十郎の殺陣だろう。政五郎一家の用心棒とヤクザ衆をたった一人であっという間に全滅させてしまう。何で例えれば良いのだろう。イデオンの重機動メカが地球連合軍の戦闘機を一瞬に殲滅してしまう……とでも言えば分かってもらえるだろうか。分からないだろうな。とにかくまず3人の浪人を瞬殺し、その後お京を殺したヤクザに怒りを露にしながら向かっていく唐十郎。非常に迫力がある。お京が死ぬ間際に果たせなかった最後の図面を破るのを、唐十郎はお京の死に顔を見つめながら静かに、力強く破いていくのだった。

「駿州江尻」

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紙切れが豪快に飛んでいくので有名な「駿州江尻」。このお話では、紙切れが献上船の図面であり、描かれている人物がお京、という設定。