脚本:保利吉紀 監督:松野宏軌
江戸城内では次期大老職を狙う政権争いが激化。老中・石倉甲斐守(菅貫太郎)は側近の鳴海勘兵衛(戸浦六宏)と共に、札差・乾屋九兵衛(外山高士)、更には金座役人も抱き込み、金座よりの横流しで得た金を要職にばら撒き、利権によって私服を肥やそうと画策。一方、対抗馬とされる老中・脇坂常陸守(江原真二郎)は真っ直ぐなご政道を目指す正義の人。もちろん、金で心を奪うような真似はせず、自身の政治手腕で人心を惹きつけていた。
そんな対照的な二人が政権争いを行っている最中、奉行所に大量の小判が届けられる。中身はどうせ偽物だと思っていた主水(藤田まこと)は、それが本物であることにビックリ。音羽の竹やぶで拾われたことは江戸町民にも知れ渡り、町人たちが必死になって土を掘り返していた。掘り返しは夜遅くまで続けられたが、ついに一人の男が別の小判が入った箱を発見。誰かに知られる前に持ち去ろうとするが、突然現れた侍たちに殺され、小判は持ち逃げされてしまう。一部始終を見ていた加代(鮎川いずみ)が後を付けると、小判と侍は乾屋の中へ入っていった……。これこそ、石倉甲斐守の政治資金であり、金座役人が不正を犯して抜き出してきた小判だったのだ。
一方、そんな政権争いにも異変が。脇坂常陸守が仕事人に襲われた。身の危険を感じた脇坂常陸守は同じ仕事人を自分の身辺警護として依頼。仕事人も遂に用心棒に成り下がったか、と嘆く主水であったが元締(島田順司)からの指示では仕方が無い。政(村上弘明)、一筆書きの助六(小野ヤスシ)、関取くずれの力(安岡力也)と脇坂常陸守の屋敷を警護する。やがてそれは、仕事人同士の抗争にまで発展していった。
そんな主水にマドンナが登場。町の往来で偶然、佐渡金山奉行所時代の恋人である折笠佐和(池内淳子)と再会したのだ。思い出話をしながら主水も満更ではない様子。佐和の家へ招待された主水は、佐和の息子である菊馬(山下規介)が脇坂常陸守に仕えていると聞き、主水は自分の子供のことのようにほっとする。
仕事人たちの抗争で次々とお互いの陣営の仕事人が死んでいく中、鳴海勘兵衛は利用価値の無くなった乾屋を毒キノコで殺害し、更には出来の悪い脇坂常陸守の息子の不祥事を預かることで、脇坂陣営は一気に旗色が悪くなる。息子の不祥事をもみ消さなければ、そしてこのままでは自分自身の政治生命にも関わる……そう判断した脇坂常陸守は、なんと石倉甲斐守と手を組むことを決意。石倉甲斐守を大老職へ推挙し自らは筆頭老中に、息子を若年寄に推挙してもらうようにとの密約を結ぶ。それに異を唱えたのは実直な菊馬であったのだが、脇坂常陸守によって無残にも殺されてしまう。更に石倉・脇坂連合は、自分たちが利用してきた仕事人を殺害。生き残った主水と政は、実は仕事人であった折笠佐和を仲間に加え、他の仕事人と菊馬、そして佐和自身の恨みを晴らすために動き出す。
『必殺!III 裏か表か』の冒頭で流される大量の小判が落ちるシーンを加えて新たに作られたオープニングナレーション(島田正吾)。そして、良い感じの仲間達といい、これで一本テレビシリーズが作れるんじゃないか、というくらいの充実度。脇坂常陸守の裏切りとか、本編のストーリーとは別のところで展開する政と少女の間に流れる因果とか、なかなか面白かった部分はあるのだけれど、全体的には落ち着いた雰囲気。奇抜さはそれほど感じられないかな。池内淳子の起用によって醸し出されるものも大きいでしょう。エンディングテーマの「旅愁」も、作品にマッチしています。しかし、佐渡金山奉行の娘がどうして仕事人に……(´ω`;)「夫を早くに亡くした」このあたりがキーだと勝手に思っているのですが。
そして何より悪役ゲストの豪華さが良い。菅貫太郎、戸浦六宏、江原真二郎、大出俊、外山高士、辻萬長……何なんですか、この面々は。脇役で江幡高志までいるし。全員メインゲストで行けるくらいの豪華さです。
テレビスペシャルでは結構好きなほうですね。時代劇専門チャンネルでの必殺テレスペはこれで最後らしいけれど、今度は『大暴れ仕事人』以降も放送して欲しいな。出来はともかくとして。
余談
今回の『仕事人vs仕事人』、HDDレコーダーに録画したんだけど、何か調子が悪い……。スムーズに再生されない。いよいよやばいか?