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日本の片隅でひっそりと暮らすおじさんが書くブログ

必殺仕舞人 第11話「秋田音頭は国盗り家老の冥土唄 -秋田-」

脚本:林企太子 監督:原田雄一 ゲスト:早川保 千野弘美

秋田に到着の京山一行。しかし活気が無い。秋田藩は現在佐竹氏が藩政を布いているのだが、お国替えで佐竹氏が城主を追われるのではないか、という噂があるのだ。秋田は食料に恵まれ鉱物資源も豊富ということもありどの国も狙う優良地。しかも、佐竹氏は農民を重宝しその生活に配慮してきた名君。お国替えになり大名が変われば、今の生活が苦しくなることも考えられる。庄屋である儀右衛門(山村弘三)は、何とかして今の生活を維持できないかと農民たちと考えを巡らせ直訴を繰り返すが、若い農民たちは命を散らす。直訴騒動の最中命を落とした夫の恨みを晴らして欲しいという おさと(千野弘美)が今回の頼み人。
今回の黒幕は川越藩家老・森藤左衛門(早川保)。秋田入りが決まっているのだが、豊かな土壌に目を付け私服を肥やさんと画策。川越では数々の悪事を働いてきた極悪人でもあり、保身のために農民の動きを止めさせるべく配下の竹田(西田良)らを使って裏工作。他所の藩から逃げ込んできた逃散者として農民たちに近づき、秋田藩士の悪い噂を流し始める。
相手が藩の家老職という大物であることから、京山(京マチ子)は一座の娘たちを気遣い一度秋田を出ることを決意。秋田を出た後、晋松(高橋悦史)、直次郎(本田博太郎)らと共に改めて秋田に戻り殺しを遂行しようとするが、国境に行くまでに農民に拉致され直次郎は長ドスまでをも奪われ一座は監禁状態。一方、儀右衛門はいよいよ自ら腰を上げ江戸国屋敷へ向けて出発。しかし竹田らがスパイとして農民たちに潜り込んでおり行動は筒抜け。森の配下によって皆殺しにされる。長ドスを持っていた おさと の兄も斬り殺され、その姿を見た直次郎は悔しさを露に。
農民たちからの監禁も解かれ、森らを始末しに向かう京山たち。秋田には活気が戻り、町行く人々は秋田音頭で盛り上がるが、夫と兄を殺された おさと だけは明るい顔を見せることはなかった。

「女の恨み晴らし」と言うよりも、むしろ普通の勧善懲悪旅物語の時代劇としての色が強いように思う今作。ストーリーもマイルドか。秋田を一度出ることに疑問を感じた娘たちが、おはな だけどうして残るのかを問い掛けたとき、直次郎が「コレ(男)がいるのよん、実は」と突拍子も無い嘘を言うのが面白い。あの後、おはな はフォローが大変だったろうなあ。

見所は、おさと の兄が殺されその死体を見る直次郎の表情。エヴァンゲリオンが暴走したかのようなケダモノに近い息遣いが怒りの強さを感じさせる。そして、スパイに殺された庄屋と兄の死体を見て「酷い!」と泣き叫ぶ おさと の悲鳴に心が痛む。

今回の殺しはチームプレー重視の特殊能力が働いている。直次郎と京山の連携プレーで3人を始末。黒幕・森は晋松が。布団で熟睡している森の腹を殴り、驚いて飛び起きた拍子に首を絞める殺しがユニーク。驚いた早川保の表情も面白い。

秋田音頭の舞う華やかな町の中で、一人だけ悲しみと怒りを込めた表情で京山一座を見つめた後に走り去っていく おさと の姿でクローズ。必殺ならではの後味の悪さを感じさせる。